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電力自由化で真に求められるもの

2016年02月23日 井熊均


 4月から電力小売りの全面自由化が始まるためか、最近、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌からの依頼等が増えています。今回自由化される対象市場規模が8兆円ということもあり、産業界の関心も高まっています。過去自由化された範囲でも電力料金は下がっていますから、今回の自由化でも、参加企業間の切磋琢磨で需要家のメリットが増えることになるでしょう。

 ただし、どこの会社が一番安い、といった料金比較に注目が集まり過ぎていることが気になります。省エネが普及したことで日本の電力需要は減っています。また、燃料の殆どを海外に依存する日本では、本来事業者の電力の原価に大きな差はありません。こうした市場で価格だけの競争が広まれば、体力のある事業者がシェアを高め、市場はいずれ寡占化することになるでしょう。価格偏重の競争には、競争の果てに事業者が価格を低下させるモチベーションを落とす、という矛盾があるのです。

 期待したいのは異業種間のコラボレーションです。ポイントを付与する、スポーツチームを応援する、特定の地域でのファンを増やす、等々色々なアイデアが出ているのが日本の自由化の特徴です。こうした動きが広がれば、自由化が内需を後押しする効果も期待できるのではないでしょうか。技術的に見ても、電力が異業種とコラボレーションし顧客向けのシステムを組み上げることで、関係する分野でのIoT(Internet of Things)が具現化されるでしょう。

 規制緩和は日本にとって成長に向けた大事な種です。価格だけの競争に陥いることなく、コラボレーションで付加価値を生み出せば、8兆円市場の自由化は日本に大きな果実をもたらすはずです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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