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中国・天津の爆発事故に想う
2015年08月25日 井熊均
中国の天津で大規模な爆発事故がありました。これまでの発表では100人を超える方々が亡くなられたとされています。心よりお悔やみ申し上げたいと思います。
爆発が起きたのは天津の中心街から40~50kmほど東に行った渤海湾沿岸部の濱海と呼ばれる地区です。中国で1980年代以来進められた珠江デルタ、上海浦東地区に継ぐ大規模な経済開発地域です。中国では地域開発を行うに当たって、数~数十平方キロメートルの規模の開発区を設定して責任と権限を与えエネルギッシュに開発を進めます。濱海地区の中心となったのはTEDA(Tianjin Economic-Technological Development Area)と呼ばれる大規模な開発区です。トヨタ自動車を始めとする世界の一流企業が多数立地する中国有数の産業地区で、居住人口も数十万人に達しています。天津にも日本のメディアで報道されている閑古鳥の鳴く開発区はありますが、TEDAは濱海地区の中心として着実に成果を上げてきました。
濱海地区には天津港も立地しています。圧倒されるほどの規模の埠頭と無数のクレーンを擁する中国北部最大級の港で、首都北京とは三本の高速道路で結ばれています。また、天津港から数km北には、尖閣諸島の問題が起こるまで我々が頻繁に通っていた天津生態城があります。今回の爆発は、TEDAと天津港のすぐ近くで起きましたから、北京、天津地域の経済に大きな影響を与えることは避けられないでしょう。
中国で事故が起きると、日本では冷ややかな見方や評価がなされることがあります。しかし、中国の開発区では多くの人が豊かな地域づくりのために一生懸命働いており、中国経済は今や全ての国にとって欠かすことのできない存在となっています。急速な経済発展などで中国が種々の矛盾を抱えていることは否定できませんが、公害問題、石油ショック、バブル崩壊等々を経験してきた日本だからこそ、こうした時に中国の人達を応援する気持ちを持って欲しいのです。
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。