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温暖化問題に求められる新たな枠組み

2015年05月28日 井熊均


 政府は、「2030年までに、温暖化ガスを2013年比で26%削減する」、との方針を発表しました。年内に開催されるCOP21で、先進国として恥ずかしくない地球温暖化問題への取り組み姿勢を示すためです。原子力発電の稼働が滞る中で、日本が国際的な評価を保てる目標を提示できるかどうか危ぶまれていましたが、何とか欧米と比較し得る目標がまとまったのではないかと思います。省エネや高効率のエネルギー技術に焦点が当たれば、日本の技術力を活かした産業育成と国際貢献が可能になるでしょう。今回の目標が日本の成長と国際的な評価を押し上げることを期待します。

 一方、四半世紀にわたる地球温暖化問題を巡る国際的な議論を振り返ると、現在の地球温暖化対策の限界が見えてきます。

 1992年に主要先進国の間で気候変動枠組条約が締結され、1997年に京都議定書が採択されるまで、地球温暖化問題に関する国際的な議論は順調に推移しました。しかし、具体化の段階に入ると2001年には京都議定書からアメリカが離脱、2011年になると、何と日本が京都議定書の第二約束期間に参加しないことを表明してしまいました。地球温暖化問題緩和のための具体的なアクションについては、20年近く迷走が続いているのです。その間、世界中で温暖化が原因と思われる異常気象が常態化するようになりました。具体的な行動も先送りされています。今回は2030年に向けた目標が発表されましたが、中期目標年は数年前まで2020年だったのです。

 長期にわたる迷走の原因は、各国の温室効果ガス削減量のコミットを積み上げるという枠組みにあります。経済負担を伴う温室効果ガスの削減について全ての国が納得する基準を設定することはできない、という理解に立ち新たな枠組みを考えることが必要になっています。温暖化問題の鍵は、各国の損得勘定を超え、最も効果的な分野に資源を集中できるグローバルなアクションプランに移りつつあります。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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