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生活困窮者自立支援法に基づく家計相談支援事業の実施・運営のあり方に関する調査・研究事業
「家計相談支援事業の運営の手引き」

2015年05月14日 齊木大


*本事業は、平成26年度社会福祉推進事業(厚生労働省補助事業)として実施したものです。

事業の目的
 平成25年度に実施した掲題の調査研究の成果と平成26年度の生活困窮者自立促進支援モデル事業の進捗を踏まえ、家計相談支援事業の運営の手引き(案)(以下「手引き」)を作成した。手引きには、家計相談支援事業にかかる様式をその記入要領ならびに記入例・活用例とともに掲載し、家計相談支援事業の現場で役立てられるツールを提供した。
 手引きのほか、様式類・記入要領と記入例・活用例についても、生活困窮者の家計の再生および自立の支援を目的として作成した。なお、作成にあたっては、今後、家計相談支援員養成に活用する研修テキストの素材となる予定であることも念頭に置いた。

主たる事業内容
1.モデル事業実施状況調査
 平成26年度の生活困窮者自立促進支援モデル事業実施自治体を対象に、事業の運営状況や実施上の課題等を把握し、手引きの執筆の材料とした。

2.手引きならびに添付資料の作成
(1)手引きの作成
 平成25年度に実施した「生活困窮者自立支援法に基づく家計相談支援事業の実施・運営のあり方に関する調査・研究事業」の成果および上記1の結果を踏まえ、手引きを作成し、効果的な事業運営モデルの普及を図った。
(2)様式(手引き添付資料)の作成
 家計相談支援事業の運営および連携機関と情報共有を行ううえで重要となる様式類の検討を行った。相談受付・申込票、インテーク・アセスメント票、評価シートなどについては、自立相談支援事業との整合性を図りながら、家計相談支援事業の独自項目も含めて検討・作成した。
(3)様式記入要領(手引き添付資料)の作成
 様式類の諸項目の理解を深めるための説明や、作成上の留意点や工夫等を整理した「記入要領」をとりまとめた。
(4)様式記入例・活用事例の編集
 家計相談支援事業の経験が豊富な団体等の協力を得て、実践事例から支援経過記録に至る情報提供を受け、これらを様式に転記し、記入例ならびに活用事例をとりまとめた。記入例作成にあたっては、実際の実践事例をもとに、全国の自治体において相談支援員が読んで理解しやすいように、必要に応じて簡略化あるいは詳細に加筆するなどの工夫を行った。
(5)参考資料のとりまとめ
 家計相談支援員養成のための研修テキストの素材となることも視野に入れ、参考資料1として「家計を取り巻く現状と課題」として、基礎的統計をとりまとめた。さらに、参考資料2として、家計相談支援員が各種制度への知識を持ち、必要に応じた機関に照会する際に役立つハンドブックの材料として、「家計相談支援にかかわる制度」について公的資料をもとにとりまとめた。

3.委員会・ワーキンググループの設置・運営
 手引き(案)や様式類、参考資料等が、自治体や家計相談支援機関にとって有益なものとなるよう、モデル事業に取り組む自治体関係者や事業者から成る検証委員会を設置し2回にわたり検討を行った。このなかで、手引きに記載すべき事項や事例、様式類の記載要領、家計相談支援事業に対する理解を深めやすい内容とするための工夫等について討議した。地方自治体職員ならびに家計相談支援機関の相談員等から成る16名の検討委員のほか、厚生労働省社会・援護局地域福祉課がオブザーバーとして参加した。さらに、様式類・記入要領・記入例の詳細について検討するため、検討委員会の承認を得て、検討委員会から4名を選出してワーキンググループを組織し、5回にわたり検討を行った。

事業結果
1.モデル事業実施状況調査
 モデル事業実施自治体174カ所を対象に調査を行い、155カ所(回収率89.1%)から回答を得た。回答は192の圏域についてであったが、このうち家計相談支援事業をモデル事業として実施していたのは54圏域(28.1%)であった。このうち自治体直営は7圏域(13.0%)、委託が45圏域(83.3%)であった。直営の場合の職員数は平均5.0人、委託の場合は2.6人であった。抱えている課題としては、「自立相談支援と家計相談支援の業務の区分が難しい」「家計相談が必要かどうかのスクリーニング」といった意見が多かった。
2.検証委員会・ワーキンググループでの検討結果を踏まえた手引きの作成
 検証委員会・ワーキンググループでは手引きならびに記入要領等について現場での活用を想定した改善提案があり、これらを反映した。一部を例示する。
(1)手引きについて
 ・家計相談支援事業の成果を評価するのは難しい。収支を理解できなかった人がひと月の収支が理解できるようになることが成果の場合もある。収支が理解できて家計表が書けても、ギャンブルや買い物にのめり込んでしまう人もいる。
  → 単一ではない評価の視点を掲載 など
(2)様式・記入要領について
 ・自立相談支援事業の様式との整合性が必要
  → 整合を取ったうえで、一部家計の独自項目・独自様式を作成
 ・住居確保給付金など、制度利用の可能性についてチェックできるとよい
  → インテーク・アセスメントシートにチェック欄を作成
 ・生活困窮者自立支援法の事業の利用には申請が必要である
  → 同意欄を作成 など
(3)記入例について
 ・年金生活者よりも稼働年齢層の事例がよいのではないか
 ・滞納していた税金を回収できた事例を掲載したい
 ・高齢の親と子の世帯などで、本人の収入は変わらないが親の死亡などの世帯の構造の変化によって困窮するようになったケースを掲載したい
  → これらを踏まえて3事例を抽出 など

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
平成26年度生活困窮者自立支援法に基づく家計相談支援事業の実施・運営のあり方に関する調査・研究事業報告書
平成26年度生活困窮者自立支援法に基づく家計相談支援事業の実施・運営のあり方に関する調査・研究事業報告書別冊参考資料

本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター シニアマネジャー 齊木大
TEL: 03-6833-5204   E-mail: saiki.dai@jri.co.jp
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