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日本総研ニュースレター 2009年12月号

空港整備勘定(旧空整特会)に求められる抜本改革

2009年12月01日 岡田孝


 航空会社への公租公課に係る負担軽減を目的に、現在、着陸料等の見直しや軽減措置の拡大が検討されている。国際的な空港間競争のなかで、国としてはこれらを引き下げる方向にあるが、現状では大幅な減額が望みにくい。
 今後、効果のある空港使用料等の引き下げのためには、空港整備勘定(旧空港整備特会)の抜本的な改革が必要であり、一般財源化を促すとともに民間資金の活用や受益者負担の構造からの脱却も視野に入れた検討が望まれる。

空港整備勘定の基本構造
 空港整備勘定の主な自己財源は、空港使用料(着陸料及び航行施設援助使用料等)と雑収入であり、歳入のおよそ半分にあたる年間約2,600億円(平成21年度予算規模)を稼ぎ出す。これらは羽田空港の借入金償還(財政投融資の元金返済と利息)と空港の管理運営の費用に相当する費用を賄う財源となる。
 また、投資的費用である羽田空港を含む施設整備費は、主として燃料財源を含む一般会計からの受入分と羽田空港整備のための財政投融資などの借入金によって調達される構造となっている。




少ない歳出削減余地
 羽田空港関連の整備費については、さらなる整備の必要性も検討されている状況であり、当面は大幅削減の対象となりにくい。一般空港整備に係る予算の削減については、滑走路などの施設の補修や管制保安関連の機器の更新投資を遅らせるなどの措置により、段階的に一部可能と考えられるが、もともとの予算規模が小さいことや安全確保の観点からこれ以上の縮減はあまり望めない。また、空港の維持管理運営費には管制官などの人件費も含まれており、管制のエージェンシー化等による業務効率化の可能性はあるものの、直ちに予算を縮減できる余地は少ないと考えられる。
 一方、羽田空港は2010年の再拡張事業の完成により、当面は大規模な整備は一段落すると考えられ、借入金償還もピーク期を越えて次第に減少する見通しであることから、その分に見合う空港使用料の減額はある程度は可能と考えられる。しかし、今後新たな羽田空港への大規模な投資が計画された場合には、再度、借入金と償還額は増加することとなり、空港使用料引き下げの担保とはならなくなる。
 また、航空機燃料税は航空会社からの引き下げ要望が強いが、施設整備の重要な財源であることや、揮発油税などの料率との関係もあるため、安易な議論は難しい。
 すなわち、現状では予算の削減余地は少なく、空港使用料等の引き下げは限定的なものとならざるを得ない。しかし、着陸料等の見直しは、JAL支援にとどまらず、地方空港の路線維持にとっても不可欠なテーマであり、特に小型ジェット機の利用普及の観点からは重要な施策である。地方空港の利用促進の視点からも、一層の着陸料等の引き下げが必要な状況である。

民間資金の活用と一般財源化による抜本的改革
 羽田空港の国際線地区エプロン等整備事業では、既にPFI手法によって民間資金の導入を図っている。このような事例を皮切りに、今後はPFI事業手法の活用などを積極的に進めていくことが不可欠である。
 また、特別会計は受益者負担が原則のため、利用者減少などの影響を大きく受ける。これまで需要拡大が堅調に続き、歳入が確保されてきた航空分野も、近年の航空不況などによって不安定になってきており、一般財源化を進めることが必要といえる。
 空港や航空利用がもたらす利益や効果は幅広い。空港整備勘定の見直しに当たっては、民間資金の活用や一般財源化を早期に進め、直接的な受益者負担原則の枠を越えた財源の確保について踏む込んだ検討が必要である。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません

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