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次世代の交通サービス作り

2015年01月13日 浅井康太


 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

 2013年10月から動き出した、個人向け地域交通サービスの立ち上げを目指す、Community Oriented Stand-by MObility Service(COSMOS)コンソーシアムの活動も2年目を迎えた。COSMOSの活動では、自動運転技術や車両のネットワーク化という技術革新によって、人々の生活をどのように変えていくのかを描き、それをメンバー企業と実現しようとしている。

 COSMOSが注目する都市における交通サービスを生み出す動きは、ここ数年で非常に活発化している。例えば、トヨタ自動車は豊田市やフランスのグルノーブル市で新たなモビリティサービス作りを進めており、日産やホンダもそれぞれ取り組みを進めている。海外では、ダイムラーベンツが「Car2Go」と呼ばれるカーシェアリングサービスを核とした、「Moovel」という複合的なモビリティサービスを既に世界各地で提供しはじめた。さらにリムジンタクシーの配車サービスを提供するUBERやLyftといった新興企業もサービス提供を開始している。ちなみにUBERにはGoogleが出資をし、推定企業価値も400億ドルに達している。活況を呈する都市交通サービス領域で、各社は何を目指しているのだろうか?

 それは自宅から駅や、買い物など都市間を移動するための各種移動サービスを一つのサービスにまとめるためのプラットフォームの提供だろう。さまざまなサービスを一つにまとめることは、無駄を省き都市全体での最適化を図ることで、サービスは効率化され、その結果ユーザーはより安価、かつ質の高いサービスを利用できる。この仕組み、つまりプラットフォームを作ることができれば、世界各国の都市が大きな市場になる。こうした動きを生み出す背景が、ネットワークにつながる自動車という技術革新だ。これらのプラットフォームが都市に広まれば、多くの利用者を抱えるサービスから、次の技術革新である自動運転技術を都市単位で導入することも可能になる。Googleが自動車のOSにAndroidの導入を目指し、UBERのようなサービスに出資し、自動運転技術を開発する一連の動きもつながってくる。

 COSMOSも地域内交通サービスのプラットフォームを生み出そうという点では、これらの動きと共通している。ただ技術革新が生み出す未来とそれを実現するアプローチが異なる。COSMOSは地域内交通サービスを基盤に、「コミュニティ」を生み出そうとしている。移動を単なる効率性から捉えるのではなく、移動することで人が人とつながり新しい出会いが生まれ、街と接点を持つことで出掛けるきっかけを作ることで、地域を単なる人の集まりではない、人と街のそれぞれが「つながり」を持った「コミュニティ」へと変えることを目指している。その基盤となる移動をCOSMOSが提供し、そこに移動のきっかけや目的を提供する企業が集まってくることでプラットフォームとなる。こうしたプラットフォームを、コミュニティ単位でサービス提供する母体と、それを支えるシステムを提供する母体の二つを作ることで、サービスを広めるアプローチを目指している。このアプローチも、一見すると非効率な仕組みに見えるかもしれないが、COSMOSのコミュニティ起点のコンセプトを理解してもらえれば必然的だと思えるはずだ。

 2014年9月には神戸市東灘区で、これまで検討したコンセプトを具体的なシステムとして実装し、将来のユーザー候補となる住民に使ってもらい、フィードバックを得て改善するというプロセスが回り始めている。また地域で提供母体となる可能性のある企業とも、サービスの立ち上げに向け検討を始めている。来年度にはこれらの活動を加速させ、小さい一歩を着実に積み重ねることを目指している。

 創発戦略センターのインキュベーション活動は、新しい技術の単なる適用例を考えるのではなく、革新的な技術によって社会が抱える課題を解決したり、まったく新しい価値観を生み出したりすることで、社会をより良く変えていくことだと個人的には思っている。COSMOSが時代の大きな転換点で一つの潮流を作れるように、2015年も頑張っていきたいと思う。時代の流れを創る活動を、皆様とぜひご一緒したい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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