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CSRを巡る動き:「持続可能な調達」がISO規格化へ

2014年11月04日 ESGリサーチセンター


 企業に対し、自社のみではなくサプライチェーンにおける人権、労働、環境などへの適切な対応を求める動きが強まっています。国際標準化機構(ISO)でも、「持続可能な調達(Sustainable procurement)に関する新たな規格の開発が進んでおり、「ISO20400」がコミッティドラフト(CD)の段階にあります。
 ISO20400は、社会的責任に関する包括的な規格であるISO26000(2010年発行)に含まれている内容の実践・普及を、サプライチェーン全体を通じて支援するための規格と位置づけられています。ISOにおいて、プロジェクト委員会「PC 277(持続可能な調達)」が設置され、2014年9月末時点で28か国(日本、米国、英国、中国、インドなど)が開発作業に参加し、13か国がオブザーブ国となっています(議長国はブラジルとフランス)。
規格が想定する対象は、ISO26000と同様に、業態や規模に係わらず、持続可能な調達を実践しようとしている全ての組織です。また、これもISO26000と同じく、認証目的ではなく「手引書」という性格を持ちます。「持続可能な調達」に関するグッドプラクティスを共有し、購買プロセスに関わるあらゆる利害関係者(請負業者、供給業者、購買者、政府・地方当局など)のためのガイダンスだということです。何をもって「持続可能」と呼ぶかどうかについては、例えばサプライチェーンを通して環境負荷を最小限にすることはイメージしやすいですが、人権や労働面でどこまでプラスのインパクトを求めるかといったことについては、今後も議論が続くのではないかと考えられます。

 企業などが、購買プロセスに社会的責任の観点を取り入れることで得られるメリットとしては、以下が考えられます。
  ・購入時の価格が仮に高くても、製品のライフサイクルを通した競争力を評価した意思決定を行いやすくなり、長期的な経済的効果が期待できる。
  ・サプライチェーン内における、法、財務、倫理、環境面などのリスクを早期に発見し、顕在化を予防しやすくなる。
  ・企業の経営方針や文化、価値観などを、実務を通して他者と共有することで、企業としての魅力を高め、顧客・従業員・株主といったステークホルダーの満足を向上させることもできる。

 規格が発行するまでにはまだ時間があるとみられますが、企業はどのように受け止めていくべきでしょうか。前述のようにISO20400は、認証目的ではなく「手引書」としての規格という性格を持つため、ISO20400に対応していることが企業間取引上の客観的な必要条件となる可能性は低いとみてよいでしょう。しかしながら、「手引書」としての価値が今後、広く認められていくならば、調達活動に関するスタンダードになっていく可能性はあります。ISOに先行して、イギリスのBSIでは2010年に「BS8903」という持続可能な調達に関する規格を提供しており、大手スーパーのマークスアンドスペンサーや、サッカー協会などが活用しています。CSR調達にすでに取組み、独自の活動の蓄積が大きい企業においても、自社の調達活動がどの程度「持続可能な」ものと呼べるのか、ISOの考え方と照らし合わせてチェックしておくことで、いっそうの改善につなげることが期待されます。
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