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CSRを巡る動き:日本がバラスト水管理条約を批准へ

2014年08月01日 ESGリサーチセンター


 国会では参議院が2014年5月16日、バラスト水管理条約(正式名称:二千四年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約)の締結について全会一致で承認し、日本が同条約の批准国に加わることが正式に決まりました。バラスト水は、貨物船等の船舶が、未積載時に貨物に代わる「おもし」として、船底に設置された専用タンクに海水を注入することによって、船体のバランスを取るためのものです。このバラスト水に含まれる水生生物が、本来の生息域外に排出されることによって、外来種となり深刻な生態系破壊を引き起こしています。こうした問題を受けて、バラスト水の管理等に関する世界的な規制について協議が行われ、2004年、国際海事機関(IMO)によりバラスト水管理条約が採択されました。今回、日本政府は条約締結に関する国会承認と併せて、船舶からの有害なバラスト水の排出禁止、処理設備の設置などを義務付ける「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出し、法案は6月11日の参議院本会議において全会一致で可決、成立しています。

 バラスト水管理条約が採択されたのは、先に述べたとおり今から10年以上も前にさかのぼります。今回、日本も条約に批准することが決まりましたが、条約自体の発効にはいまだ至っていません。条約の発効要件は、30カ国以上が批准し、批准国の商船船腹量が総トン数で世界の商船船腹量の35%以上となること、と定められています。発効要件のうち、批准国の数が30カ国以上という要件は既に達成されており、日本とトルコ共和国(※)を加えると批准国は42カ国になる見込みです(2014年6月25日現在)。批准国の商船船腹量については、日本とトルコ共和国のものを加えても32.5%と、発効要件にわずかに届かない状況です。ただ、この要件もあと1~2カ国が批准すれば達成される公算が大きく、日本政府も2015年度中に条約の発効要件が整うと見込んでいます。

 バラスト水管理条約が正式に発効すれば、船舶にバラスト水の処理設備を設置することが義務化されることになるため、世界の海運会社にとっては新たな設備投資が必要になります。日本の海運会社は、環境への配慮の取り組みを積極的に進めており、処理設備の設置で先行しています。同時に、高い技術力を活かして、バラスト水処理装置の製品化を進める日本企業も増えてきています。世界のバラスト水の処理設備の市場規模は2兆円を超えるともいわれており、競争力や事業機会の観点からも条約発効を巡る動向を注視していく必要があるといえるでしょう。

※日本とほぼ同時期に、トルコ共和国においても条約批准に関して議会による承認が行われた。
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