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ASEANで需要が高まる付加価値の高い工業団地開発に日本企業の強みが生きる

2014年06月04日 七澤安希子


 トヨタの「インドネシアでの販売モデルの9割を現地生産」、「オーストラリアの生産拠点のタイ移設を検討」など、ここ数年のグローバル企業によるASEANへの拠点投資の活発化が目立つ。そしてその受け皿となる工業団地開発においても新造や拡張が続々と行われている。ホーチミン市周辺だけでも100近くの工業団地が存在するほどだ。まさにASEANは工業団地開発ブームで盛り上がっており、現地企業はもちろん、タイやシンガポール、韓国、ドイツ等のグローバル企業が、ASEANの工業団地開発に参入し始めている。そして日本企業といえば現地の工業団地開発になかなか入り込めていないのが現状だ。

 このようなブームの中で、一部の工業団地に需要が集まりその他は土地を余らせているといった工業団地の選別が起き始めている。

 ASEANには、安価な賃料だが基礎インフラの整備度合が低く、停電が頻繁に発生する工業団地はいまだに多い。一方、賃料を高く設定しながら優良なグローバル企業を多く入居させることに成功している、アマタ社やセムコープ社などが開発するいわゆる「勝ち組工業団地」が存在する。勝ち組に共通する点とは何か。それは、工業団地のインフラ整備度合はもちろんのこと、インフラ運営の管理能力が高いこと、そして工業団地労働者の毎日の生活環境をサポートする機能が充実していることである。「勝ち組工業団地」内の道路は安定走行が可能な程に整備され、エネルギーの安定供給が保証されていた。道路沿いの植栽は常に綺麗に整えられ、清潔感を感じられた。また、工業団地内に設置された質の高い日本食レストランは現地の人で満席状態であった。就労者や周辺住民の生活をサポートする機能が工業団地の付加価値として作用しているのである。

 今後、ASEANへの更なるグローバル企業の拠点投資に伴い、「勝ち組工業団地」が示すような高度なインフラ管理運営や生活サポートを実現する、付加価値の高い工業団地へのニーズが高まるだろう。日本企業は付加価値化に資するという方法で、技術力やマネジメント力を生かした工業団地開発への参入ができるはずだ。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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