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自動車の在り方を変えるイノベーションの波

2013年03月26日 浅井康太


 自動車に迫る大きな変化として注目されている二つの技術がある。
一つは、コネクティッドビークルと呼ばれるネットワークにつながる自動車、つまり自動車とネットワークをつなぐ技術だ。そしてもう一つが自動運転を実現する技術だ。これら二つの技術の本格的な普及によって、自動車がかつての映画「ナイトライダー」のような主人公をサポートする自動車になり、ドライブをより安全で、快適なものに変えると言われている。

 このような技術の進歩により、未来にはよりスマートな自動車ができる。ただこのイノベーションは、自動車を単に賢くて便利にするだけでなく、社会における自動車の在り方を根本的に変えるのではないかと考えている。

 では、どのように変わるのか?

 それは自動車が公共交通機関の一部として、社会インフラとなるということである。極端に言えば、自動車はもはや個人で所有する乗り物ではなく、社会全体で所有して、誰もが必要な時に使える移動手段になるのだろう。つまり、自動車は必要な時にお金を払って利用する乗り物になるということだ。

 もし仮に、すべての自動車がネットワークにつながっていて、自動運転されていれば、あとは自動車を使いたいと思う利用者が、いつまでに、どこに、誰と、到着したいのかを入力しさえすれば公共交通になり得る。そうすれば、あとは利用者が入力した需要情報に応じて、システムが最適な自動車の運行計画を立て、それに合わせて遠隔で把握している自動車の状態(燃料はどれくらいあるのか、故障はしていないのかなど)に応じて、利用者に最適な自動車を配車し、計画通りに動かせばいいのだ。少々複雑な公共交通ではあるが。

 これは全くの絵空事だろうか。必ずしもそうとは言い切れないのではないか。

 例えば、現在提供されているカーシェアリングサービスは、見方を変えれば、このような複雑なサービスを小規模で、人力でやっていると見ることができる。さらに、デマンド交通と呼ばれる需要に応じて運行計画を変えるバスは、ある程度自動で輸送計画を立てることもできるし、ライドシェアといった相乗り相手を自ら探すサービスもある。他にも、道路渋滞情報予測や道路のルート検索サービスがあり、これらを組み合わせれば、最初に述べたサービスを実現することは全く不可能とは言い切れない。あとは既存のサービスに、自動運転がくっつけば実現できるのではないだろうか。

 では、自動運転はどうなのか。知っての通り、自動運転技術はトヨタをはじめとする自動車メーカーはもちろん、Googleといった企業が参入し、技術開発は実用化に向けて大きく進んでいる。これら技術を使った自動車は、米国電気電子学会(IEEE)によれば、2040年には全体の75%に達すると大胆な予測をしている。

 もちろんこれらの見立てには、大胆な予測や論理の飛躍、大きな期待がもちろん含まれているだろう。しかし一方で、社会が変わると信じて動き始めているプレイヤーがいることも事実だ。こういったプレイヤーの中から、イノベーションを成功させるきっかけをつかむものが現れれば、私が書いた絵空事のような大きな変化も早々と実現するのではないだろうか。今、それ程イノベーションの波は迫っている。

 変化の先に向かって、未来を信じるプレイヤーと一緒に、社会を変えるイノベーションを起こしていきたいと、私は考えている。

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