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オピニオン

インドでは”上位低所得層“に注目が集まる

2012年12月05日 渡辺珠子


2012年9月中旬、インドのムンバイであるカンファレンスに参加した。ヘルスケア産業および小売業について、インドが抱える課題とその解決策について各分野の企業のトップや専門家がパネルディスカッションを行うものであった。興味深いことに、いずれのセッションでも彼らの見解はほぼ共通していた。それは、「地方都市や農村部に住む低所得層の人々に、商品やサービスを届けることが、現在そして将来に渡り企業にとっての必須事項である」ということだ。さらに、低所得層の人々が抱える顕在的および潜在的ニーズに応える商品やサービスを設計することが重要である、という点でも意見の一致が見られた。人口の8割が低所得層と言われるインドにおいては、彼らを自らのビジネスに取り込むことの魅力は非常に大きい。

彼らの言う低所得層とはどのような生活レベルの人々か。そこで、上述のカンファレンスに登壇した企業人や専門家に「あなたの思う低所得層とは、一体どの程度の所得レベルなのか」と尋ねたところ、「1日当たり支出額が200~400ルピー(約290~590円)程度以下」という回答が多かった。ちなみにアジア開発銀行の中間層の定義は、世帯支出額1日当たり10~100米ドル(約810~8,100円)である。したがって、登壇者たちは中間層予備軍に位置づけられるような、低所得層の中でも上位に位置づけられる人々を意識しているのである。中間層予備軍向けの商品やサービスの設計や、それらが人々の手に届く仕掛けをしていくことは、人口を考慮すれば現時点でも大きな市場を獲得するチャンスである。しかも将来彼らが中間層へと移行した場合の経済効果は計り知れない。

インド企業だけでなく、外資企業の中にも地方都市や農村部の中間層予備軍である低所得層の取り込みに積極的な企業が増えている。2011年6月にはウォルマート・インディアがプライベート・ブランド商品を強化し、低価格帯の商品を展開することで、地方都市の顧客を取り込む方針を発表した。弊社が付き合いのあるインドの社会的企業にも、今年に入って中間層予備軍のニーズや生活様式を理解するため、農村部での調査を依頼する多国籍企業がぐっと増えた。この動きは無視できないと考える。今後、インド市場で日本企業が活躍するためにも、中間層予備軍である低所得層に着目したビジネスの積極的な検討をぜひ薦めたい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。