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改正が待ち望まれる中国の電力法

2012年11月07日 李建平


中国の電力法は、1996年4月1日に正式に施行されてから16年間が経った。この16年間に、発電事業と送配電事業の分離といった電力体制改革(2002年)、新たな主管部門の電力監督管理委員会の設立(2003年)、再生可能エネルギー法の施行(2005年)など様々な出来事が起きており、中国の電力市場を取り巻く環境は大きく変化してきた。こうした環境変化によって、実態と乖離してしまった電力法を改正すべきとの声が絶えないものの、未だ改正のめどは立っていない。

これまでにも電力法改正の動きは何回かあった。2003年、初めて人民代表大会の法改正計画に取り上げられ、翌年にも改正されると大々的に報じられた。また、2006年の人民代表大会でも再度議案として上げられ、中央の関連部局は年内に改正草案を取りまとめると表明した。しかし、いずれも結果が出ないまま今年に入って、電力法改正の主導機関である国家発展改革委員会能源局は引き続き関係者と検討していると報道されたが、いつ改正案が打ち出されるかははっきり示されていない。

電力法を改正するには、新しい制度設計や利害関係者の調整が必要である。その中で最大の課題は電力供給事業者選択の自由化だと言われている。電力法第25条は、「一電力供給エリアに電力供給機関一つのみを設立」と規定している。すなわち、需要家は指定された国家電網の各地の拠点からしか電力を調達できない。この規制のため、再生可能エネルギーやコージェネレーションによる発電は自家用もしくは国家電網に売電することに限定され、第三者への電力供給は許されていない。一方、自家発電や分散型電源の普及は電網側収益の減少につながり、再生可能エネルギーの売電は系統に影響するうえ売電価格は火力発電より高いから、国家電網にとってはインセンティブに乏しい。こうしたこともあり、日本や欧米先進国のスマートグリッドが分散型電源の普及に注力するのに対し、中国のスマートグリッドは超高圧送電網の構築に偏っている。これらの問題を解決するためには、国家電網など関係者との調整および制度整備が必要不可欠であろう。

再生可能エネルギーの活用や分散型電源の普及は中国のエネルギー発展の道筋であり、中国政府もエネルギー供給の多様化を推進する方針を明確にしている。10月24日に国務院が公表した「中国のエネルギー政策白書」には、分散型電源による直接供給および電網接続する際の差別や妨げの解消の実現を努力すると明言されており、電力法の改定も再度言及された。系統電力への依存を解消するために、ボトルネックとなっている電力法の改正が切に待ち望まれる。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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