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始動する中国の土壌浄化

2012年04月10日 西村実


 中国を訪問し、某地方政府の環境庁の副庁長、地盤調査を本業とする民間企業の董事長、大学教授らと面談した。彼らの話を総合すると、いよいよ中国でも政府主導での土壌浄化が始まるようだ。第十二次五カ年計画では、経済成長だけでなく、土壌汚染対策、特に重金属汚染対策を重要課題と位置付けている。中国政府は、汚染物質を排出する業界に対して旧式の生産設備の更新を指導しているが、基準を満たせない工場等の稼働停止や強制的な閉鎖が進んでいる。一方で、人口集積に備えた都市部での大規模な宅地や商業施設の開発が進められており、閉鎖工場跡地の再開発では土壌汚染対策は避けて通れない課題となっている。

 わが国の土壌汚染対策法に相当する法律の検討・策定作業は進められているものの、施行には至っておらず、土壌汚染対策のスキームが未整備のままニーズの方が高まっている状況である。一部の地方政府では、モデル事業として先行的に土壌汚染対策に取り組んで対策スキームを作り上げようとする動きが始まっており、土壌浄化技術で先行する日米欧の企業との提携や中外合弁企業設立の動きも出ているようだ。

 筆者は90年代から土壌汚染問題に取り組んできたが、中国の閉鎖工場跡地に案内されると、中国特有の事情を理解することが重要だと強く感じる。第一は浄化対象地のスケールが圧倒的に大きいことである。わが国で安易に行われている掘削除去は非現実的であり、限りなくオンサイト・原位置での対策が求められる。第二は汚染の程度が相当深刻かつ複合汚染が多いこと、またわが国ではあまり例を見ない農薬汚染が深刻な点も特徴である。現実的に完全浄化は困難であり、リスク評価に基づく対策シナリオが重要で、単独の浄化技術ではなく総合的なシステムとしての提案が不可欠である。

 いずれにしても土壌汚染対策事業を推進して実績とノウハウを蓄積してきた日本企業にとっては、中国の土壌汚染対策市場への参入機会であることは間違いない。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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