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エネルギー・環境分野に必要な情報の扱い方

2012年03月27日 佐々木努


震災以降、エネルギー・環境分野への関心が急速に高まり、世の中に当該分野の情報が溢れかえるに至った。世の中の当該分野への理解が向上したように思えるが、実際には溢れる情報を消化しきれず「持て余している」企業も多く、情報の取り扱いに悩んでいる。その原因は、情報の評価、選択、解釈といった情報の利用者側に必要な処理能力、すなわち情報リテラシーの不足にある。

エネルギー・環境分野における情報リテラシーの不足の典型例の一つが、専門性の欠如である。政策や技術、検討経緯、背景などを知り尽くしていることを前提とした情報提供が常態化した分野であるため、門外漢には全体感がつかめず要領を得ない作業をしてしまう。また、自社のビジネスと情報を結び付ける力(自社に必要な情報を定義する力)の不足を原因とする問題も散見される。例えば、中長期的なエネルギー構成に関する議論のプロセスは一部の企業を除けばそれほど重要ではないにもかかわらず、多くの企業が情報収集に勤しむ一方で、電力需給逼迫に対する他社の取り組みや製品・技術動向に関する情報収集が疎かになっているケースが見られる。メディアで報じられる情報の多寡で、収集する情報の優先順位が左右されないリテラシーを持つことが必要になる。

当該分野の情報リテラシーは専門性を有する一部の部署(社員)が担ってきたか、外部機関の支援で補完してきたという企業が多い。これまではこうしたやり方で事足りてきたわけだが、情報量が飛躍的に増加した今、特定の部署や個人だけに依存するやり方では処理能力に限界があろう。企業としての情報リテラシーを向上することが、競争力を確保するための第一歩になるはずで、情報の重要性は高まっているのである。

特効薬とはいかないが、情報リテラシーを高める工夫は存在する。例えば、利用シーンを想定した情報の整理(「省エネ」というテーマで情報整理するだけでなく、意思決定に有用な他社の「想定」や「見立て」などの要素で整理)や、自社の意思決定の参考になる見立てを行う専門家や企業(個人)を見つけ、その所作を定期的にウォッチすることなどが挙げられる。将来的には、情報の発信側がこうした利用者のニーズを踏まえた情報提供を実践する可能性もあるが、まずは各企業ができる情報リテラシー向上策を地道に取り組んでいくしかないだろう。

*新年度より、弊社のウェブサイトを通じてエネルギー・環境分野の様々な見立てを速報性高く紹介していく予定です。企業の皆さまの情報リテラシー向上に貢献できるよう努めていく所存です。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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