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産業の高度化を目指すタイ

2012年03月13日 副島功寛


アセアン諸国は今、2015年の経済統合に向け、新たな発展段階を迎えています。経済統合のベースはアセアン自由貿易地域(AFTA)であり、このAFTAが更に統合を深めることでアセアン経済共同体(AEC)が創設されます。

この結果、域内の産業活動は一層活発化し、アセアンのグローバル社会における地位は向上すると思われます。一方、各国は経済統合に過度な期待を抱いているわけではなく、独自の施策を進めています。その一つが、特定の産業を集積させ、企業間の緊密な連携のもとに生産性向上を図る「産業集積」の形成です。工業団地等に産業集積を形成し、そこに内外企業が進出すれば、産業の裾野の拡大やGDPの向上が期待できるからです。

これまでは、主に賃金等によるコスト面での優位性や、税制等の優遇制度を背景に、産業集積間の誘致競争が繰り広げられていました。一方、新興国の経済成長等に伴い、こうした点のみで差別化を図ることが難しくなっているため、各国は新たな魅力づくりを急いでおり、各開発担当者も、自らの集積が何を磨き、備えるべきかに強い関心を抱いています。一方、日本企業もまた自らの拠点をどの集積に構えるかを選択するために必要な判断材料を求めています。

今、アセアンの産業集積を先導し、トップを走るのはタイです。昨年の洪水被害はタイの産業基盤を脅かす出来事でしたが、その後、自動車産業を中心に大半の日本企業が拠点を維持する方針を明示したことから、タイが引き続きアセアンの生産機能を先導していくことになりそうです。

そのタイの産業集積が今目指すのが、産業構造の高度化です。当社が支援する工業団地管理運営会社では、グローバル企業が生産機能に加え開発機能までを現地化する動きに、自らの産業集積を対応させようとしています。トップの産業集積が新たなポジションに移行すれば、その空いたポジションを新たな産業集積が担います。結果、アセアン全体の産業ピラミッドの裾野が拡大し、産業構造の高度化が実現できます。タイのトップの産業集積が新たな進化を実現することが、アセアンの新たな産業構造を形成する起点になるといえるでしょう。

タイは歴史的にも周辺国との微妙な関係のなか、国際社会において絶妙な地位を維持してきました。産業の高度化に取り組む現地の開発主体と議論すると、この新たなポジションへの挑戦を実現し得る聡明さを受け継いでいることが分かります。

タイの産業集積の新たな挑戦は、そこに拠点を置く日本企業にも大きな影響を及ぼします。我々も引き続き、こうしたアセアンでの先進的な取り組みに関わっていきたいと思います。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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