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Business & Economic Review 2011年6月号

BOPビジネス立案の観点-ビジネスに開発効果をいかに組み込むか

2011年05月25日 渡辺珠子


要約

  1. 2008年頃からBOPビジネスに対する官民の関心が高まっている。JETROやJICAのように、民間企業のBOPビジネス促進のための仕組みや補助金制度を提供する動きもみられる。BOPビジネスの検討を開始している民間企業にとっては、公的機関による支援の動きは追い風となっている。BOPビジネスでは、貧困削減などの開発効果を生み出す観点を盛り込むことが不可欠であるが、実際にどのようなビジネスモデルにすれば良いのか、という点が民間企業にとって大きな課題となっている。


  2. 開発効果とは途上国が抱える開発課題解決のために実施した事業インパクトを意味する。開発課題というBOP層が抱える「ニーズ」をダイナミックに解決するビジネスは、結果としてBOP層に好意的に受け入れられ、安定した売上げ確保につながる。そのために開発効果にこだわってビジネスモデルを構築することが必須なのである。


  3. 開発効果を生むビジネスモデルを構築するには、①現在のBOP層の状態を理解し、②将来彼らをどのような理想の状態にし、③それをどのような方法で実現されるのか、という検討ステップで行う。開発効果は①と②のギャップに現れる。①では、ビジネスの対象者とするBOP層を明確にする。その方法としては、BOP層が日常生活のなかで感じている問題点やニーズを深く理解したうえで、自社の強みを認識しつつ、それら問題点やニーズが集中している分野から、メインの対象者を認識する。②では、メインの対象者が将来どのような状態であることが望ましいかを検討し、具体的なゴールを設定する。そのためには、かかわるすべてのステークホルダーを交えて議論をし、理想像を出し尽くすことが必要である。③では、最適なビジネスアイディア、活用すべきリソース、ビジネスモデルの
    3点を検討する。検討の最後に、金銭面や時間面といった制約条件を加味して、現実的な方法に落とし込む。①~③の検討においては、常にメインの対象者がぶれないように留意し、彼らが抱えるニーズにリーチしているかを検証しながら行うことが重要である。


  4. BOPビジネスで開発効果を生み出すためには、自らの商品や技術力を中心に考えず、その目線をBOP層におくことが重要である。③の方法論ばかりを論じても開発効果を生み出すことには繋がらない。上述の①~③のプロセスを短絡化したり疎かにせず、開発効果を意識した「BOPビジネスの土台固め」を確実に行う日本企業が増えることを期待したい。
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