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RIM 環太平洋ビジネス情報 2004年4月Vol.4 No.13

マレーシアの競争力強化とブミプトラ政策

2004年04月01日 環太平洋研究センター 坂東達郎


要約

  1. マレーシアでは1990年代半ば以降、生産コストの上昇や直接投資の低迷に直面し、これまで優位にあった電気・機械製品で中国との競合が厳しさを増している。労働力の逼迫により賃金が上昇したことに加えて、生産性の向上が進まなかったことが要因である。政府は、96年以降の一連の国家計画において、生産性向上のために、裾野産業を担う地場中小企業の振興、質の高い労働力の育成、企業経営の効率化などに取り組んだ。しかし、全要素生産性の試算結果からは、生産性の向上はほとんどみられない。

  2. このようななかにあって、近年、政府はマレー人の優遇策であるブミプトラ政策の見直しを進めている。ブミプトラ政策は、これまで人種間の融和を通じて社会・政治の安定をもたらした。しかし、競争制限的な同制度のもとで、マレー系企業の生産性向上への取り組みが不十分となった。

  3. マレーシアの生産性の低さは、80年代以降の経済政策のあり方に起因する。同国では、外国企業の大量進出によって輸出主導型の経済発展が進展した。しかし、外国企業は飛び地経済を形成したものの、裾野産業の発達やマレー系企業の成長には貢献しなかった。一方、ブミプトラ政策のもとでマレー系企業が育成されたが、排他的な優遇措置が与えられたために競争力が欠如していた。マレーシアが国際競争力を確保するうえでの課題は、これまでの労働・資本投入型の経済発展から、生産性の上昇による経済発展へと成長パターンを転換することである。

  4. マレーシアは、国家ビジョン計画(2001~10年)において、産業構造を現在の加工組立型産業から高付加価値の知識集約型産業(Kエコノミー)へ移行させようとしている。同計画の前半5年間の第8次マレーシア計画では、人材開発に高い優先順位がおかれ、外部環境の変化に対応できる強靱な経済を構築するための牽引役として、中小企業を中心とした民間部門に期待がかけられている。マレーシアが、Kエコノミーの実現を通じて目標である2020年の先進国入りを果たすためには、ブミプトラ政策の見直しを進めるとともに、地場中小企業の振興が課題である。
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