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RIM 環太平洋ビジネス情報 2003年10月Vol.3 No.11

IMFプログラムから卒業するインドネシアの課題

2003年10月01日 環太平洋研究センター 坂東達郎


要約

  1. インドネシアは、1997年11月以降、IMFの金融支援を受けており、2003年7月時点の累計供与額は107億ドルに達する。現在の融資契約(第2次EFF契約)は2003年末に終了する予定であるが、インドネシア政府は、IMFとの新たな契約は交わさず、ポスト・プログラム・モニタリング(PPM)へ移行することを決定した。インドネシア政府がIMFプログラムの終了を決定した背景として、a.外貨準備高が高水準で推移しており、融資を返済しても外貨繰りに支障を来す可能性が小さいこと、b.国民の反IMF感情が依然として根強いこと、c.ほぼ同時期にIMFの支援体制下に入った韓国とタイがいち早く支援プログラムから卒業したこと、などがあるものと考えられる。

  2. インドネシアがIMFプログラムを終了することに伴う財政面への影響が懸念される。プログラム終了に伴って、これまでIMFの金融支援を前提に主要債権国会議(パリクラブ)において認められてきた公的対外債務のリスケジューリングが出来なくなる。これに伴って、2004年には元利金返済として30億ドル強の資金が新たに必要となる。また同年には通貨危機後に金融システム再建を目的に発行された国債の大量償還も始まる。いずれも財政への影響が大きく、政府が目標としている財政赤字の削減が困難となる。

  3. 国内外の巨額な債務が中長期的に同国の財政に与える影響をみるために、1999年から2011年の歳入と歳出の推移を試算すると、まず財政赤字の GDP比は、2002年の1.7%から2003年に1.8%に上昇した後低下に転じ、2008年には黒字に転換する見通しである。もっとも、民営化や銀行株式の売却が当初計画から遅れる可能性が高く、財政赤字の削減は予断を許さない。一方、対外債務償還費については、2004年をピークに緩やかに減少していくものの、2011年時点でも40億ドル強の負担となる見込みである。この結果、歳出に占める元利金支払いの割合は2002~03年の10%弱から 2004年には17%に上昇し、再び10%を下回る水準に低下するのは2008年前後となる見込みである。

  4. 巨額の対外債務と国内債務を抱えたインドネシアにとって喫緊の課題は、債務返済のための資金調達である。政府が毎年必要とする資金は、財政赤字分だけではなく、国債や借り入れの元本返済分も含まれる。この財政ギャップは、2002年の44兆ルピアから2004年には94兆ルピアに増加し、2005年のピーク時には101兆ルピアに達すると試算される。とくに2004年から2007年には、毎年80~100兆ルピアの資金が必要となる。国内での資金調達に限界があるなか、国際社会による支援が望まれる。

  5. インドネシア支援国会合(CGI)などの支援によって外貨の資金繰りにめどがつけば、財政破綻は回避出来るものと考えられる。このようななか、インドネシアが中長期的に取り組むべき課題は、巨額の国内債務と対外債務の削減を進めることと並行して、財政基盤の抜本的な強化を図り、外国からの支援に頼らない自立した経済運営を行える体制を整備することである。同国の歳入、歳出構造をみると、とくに問題とされるのは租税収入が少ないことである。安定した税収を確保するために、徴税システムの整備を進めることが急務である。
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