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Business & Economic Review 2003年05月号

【POLICY PROPOSALS】
喫煙、排気ガス、アルコール乱用に起因する超過医療費の抑制に向けて

2003年04月25日 調査部 経済・社会政策研究センター 志水武史


要約

  1. 今日のわが国の医療政策における重要課題の一つは、医療保険財政の健全化である。医療費を抑制し医療保険財政の健全化を図るためには、医療の効率化政策に加えて、医療費の中から「超過医療費」をくくり出し、これを圧縮することも必要である。超過医療費とは、国民が特定の財・サービスを消費・利用した場合に外部費用として発生する医療費であり、それらの特定の財・サービスを消費・利用がなければ発生しなかったであろう追加的な医療費のことである。

  2. 本稿では超過医療費の発生源として「喫煙」、「排気ガス」、「アルコール乱用」を取り上げた。その理由は、財・サービスの消費・利用が健康被害をもたらすことが疫学上・判例上明白であり、超過医療費が無視出来ない大きさに上ることである。喫煙、排気ガス、アルコール乱用による超過医療費を推計すると、1999年時点で約3兆1,898億円、将来(2025年時点)における超過医療費の総額は約7兆4,791億円と推計される。

  3. 超過医療費を抑制する場合、外部費用である超過医療費を課税によって内部化し、超過医療費の原因となる喫煙・排気ガス・アルコール乱用の水準を適正化することで医療費を抑制する政策が考えられる。また、内部化以外の抑制策としては、a.公共交通機関・自転車等の代替交通手段の整備、b.自動車集中に対する規制の強化、c.価格以外の包括的手法の組み合わせによる喫煙・飲酒の適正化(「健康日本21」の促進)、の三つが考えられる。

  4. 喫煙と排気ガスによる超過医療費に関して、課税・課徴金を用いて内部化した場合の医療費抑制効果は2025年時点で年間約269 億円と推計される。また、喫煙、排気ガス、アルコール乱用による超過医療費に関して、内部化以外の抑制策を実施した場合の医療費抑制効果は、政策ごとの抑制効果の重複を考慮しない場合、2025 年時点で年間約1兆1,511億円と推計される。

  5. 超過医療費の抑制効果は国民医療費の一部にとどまるが、国民医療費の抑制を通じて医療保険財政を健全化させるためには、前述のような政策を積み重ねていく必要がある。また、自動車の利用に伴って発生する外部費用は超過医療費だけでなく、より包括的な社会的費用も含まれる。したがって、外部費用の内部化という観点から自動車あるいは自動車燃料に対して課税する場合には、単に超過医療費の内部化という視点にとどまらず、環境税の導入も含めた幅広い視点から検討すべきであろう。
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