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コラム「研究員のココロ」

なるか都道府県合併?!(第2回)
~ポスト市町村合併のうごき~

2003年09月08日 亀山典子


約1年前の同欄で、掲題のテーマ「都道府県合併」を取り上げました。その後、この動きはどのようになっているのでしょうか。
 今年4月に発表された第27次地方制度調査会の「中間報告」では、「都道府県の自主的合併の手続を整備する」こと、道州制については「幅広く議論を行うこと」が、それぞれ明記されました。しかし、報告の最終段では、「都道府県としての機能や役割は依然として大きいこと」、「道州制を議論する前に既存の制度である都道府県の広域連合を活用すべき」との見解も併記されており、道州制については「将来の課題として検討すべき」と、やや先延ばしともとれる方針も感じられます。都道府県合併の推進を意図しながらも、道州制の実現についてはかなり抑制の効いた書きぶりであることは否定できません。
 しかし、つい最近、小泉首相が北海道をモデルとして道州制のあり方を検討すべきであるとの発言が新聞等をにぎわせたところですが、その北海道での取り組みが、これまでぼんやりとしていた「道州制」の形を少しずつ明らかにしつつあります。
 北海道ではこの夏、「分権型社会のモデル構想(案)~北海道から道州制を展望して~」という報告書をまとめ、これをインターネットで公開するとともに、意見募集を行いました。この報告書によると、「道州制での地域の暮らしや経済の姿」として、以下の4点を提示しています。

 「地域の自己決定権の拡大」
 「北海道の有する多様な特性の発現」
 「地域特性に根ざした地域経済の戦略発展」
 「チャレンジ型政策の積極的展開」

 地域のことは、地域で決める。その「自己決定権」から「地域特性」に対応した施策や事業が展開できるのだという理念が強く伝わってきます。なかでも興味深いのは、「チャレンジ型政策」の考え方で、以下の2点でまとめられています。

〇リスクを分担するネットワーク
・市民やNPO、道内企業や自治体が知恵と力を結集して、リスクを分担する道内ネットワークシステムを構築し、チャレンジをサポート
〇チャレンジしやすい環境づくり
・国の基準や制度、規制の緩和・廃止などにより、チャレンジする環境を整備
・拡充された税財源等の財源を、チャレンジ型政策課題への対応に振り向けることが可能

 責任と権限・財源を持つことができれば、リスクは地域自らで負担をするし、チャレンジする環境も整えられるというわけです。
 さて、北海道では、97年に英国議会から独立して議会を設立したスコットランドも取材しています(「スコットランドの分権改革に関する調査研究報告書」〔平成15年3月〕)。イングランドとスコットランドの取り組みは、北海道と国の関係に見立てると、さまざまなヒントがあるのではないかというのが本調査のねらいです。この調査によると、スコットランド政府はイングランド政府の税源である所得税の税率に対し、±3%の変更権を持っているそうです。スコットランドに対する補助金が不本意にカットをされる場合には、イングランド政府に対してこの権利を行使することもあり得るそうですが、現在のところは権利行使をした実績はないようです。この制度が、日本でもなかなか議論が進まない財源移譲の問題に一石を投じる可能性があるかどうかは別にして、税財源の権限が中央政府と地方政府の駆け引きの一つとして機能していることは十分に読み取れます。道州制に向けて、都道府県の権限見直しが行われる場合には、税財源の問題は避けて通れないことは確実です。
 ところで、北海道の「波」は、どのように全国に広がるのでしょうか。すでに、北東北3県(青森県、岩手県、秋田県)では、若手職員による広域政策研究会が道州制について検討を行っており、平成22年までに3県が合併して「東北特別県」を設置し、その後5-10年で「東北州」に移行すべきだとの方針をまとめています。そして、寺田秋田県知事は、「北海道を含めた4道県の会議を設けたい」と述べ、今後、道州制の在り方を4道県で話し合う研究会の設置を協議する方針を示しています。

 「改革のチャンスはある日突然やってくるものなのだ。それが何時やってくるかは分からない。大切なことは、何時、改革のチャンスがやってきてもいいように、自分達が成し遂げたい改革の中身、設計図をきちんと周到に準備していくことだ。」

 これは、スコットランド議会の設置にあたってリーダー的存在だったイゾベル・リンゼイ氏のコメントです(前述の報告書より引用)。
 このコメントが、道州制の実現のためには都道府県の主体的な取り組みが不可欠であることを示唆していると読み取るのは、筆者だけではないはずです。その意味で、4道県での取り組みに対する期待は、今後ますます大きくなることは必然だといえるでしょう。
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