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コラム「研究員のココロ」

なるか都道府県合併?!
~ポスト市町村合併のうごき~

2002年08月26日 亀山典子


 現在、全国各地で展開されている市町村合併協議。総務省の調べによると、平成14年4月現在で全市町村の7割以上がなんらかの形で合併の検討を始めています。まさに「平成の大合併」と呼ぶにふさわしい様相を呈してきたと言えるでしょう。

 合併自治体に対して財政優遇措置を行うとする合併特例法の期限である平成17年3月を目途に、現在の市町村合併の議論は一つの節目を迎えます。「3,000余りの自治体を1,000に」という政府が掲げる目標については、その実現可能性に対して否定的な向きが多いようですが、少なくとも合併件数がこの10年間でピークに達することは必至だと思われます。

 さて、こうした市町村再編の最中、次の地方制度の再編を予感させるうごきがあります。総務大臣の諮問機関である第27次地方制度調査会が平成13年11 月から始まっており、そのテーマの一つとして道州制や都道府県合併が設定されているのです。片山総務大臣も「市町村合併が進めば、次は都道府県の再編成に進むべきだ。市町村の権限が強まれば都道府県をどうするかという議論になる」(平成14年2月11日朝日新聞)と述べるなど、どうやら都道府県合併の議論は避けて通れない情勢になってきているようです。

 市町村合併が進んだとは言え、すべての市町村が均質的な行財政能力を兼ね備えるわけではありません。むしろ、合併した市町村とそうでない市町村とで、その格差が大きくなることが次の問題となってきます。そうした状況を想定し、経済財政諮問会議(議長:小泉純一郎首相)では、「すべての自治体が同じように行政サービスを担う仕組みを見直す」との基本方針を打ち出し、地方制度調査会ではこれを受けて、市町村の規模別に事務権限を見直す方向で議論が進められています。

 都道府県合併に関心を寄せているのは国ばかりではありません。主役である都道府県でも、自主的にこのテーマに取組む事例が出始めています。秋田県では、今年4月に県庁内に「道州制等に関する研究会」を設置。都道府県合併のメリット・デメリット、実現の可能性などを調査研究項目に掲げて検討に着手しました。また、秋田県、青森県、岩手県の3県では、県合併も含めた広域連携のあり方を検討する「北東北広域政策研究会」も同じく今年4月に立ち上がるなど、3 県で足並みをそろえて県合併を視野に入れた取組みを始めています。さらに宮城県もこれに対して「意見交換をしたい」と連携に前向きな発言をしています。

 また広島県では、昨年12月から都道府県合併や道州制を視野に入れた将来ビジョンを検討するための専任スタッフを配置しています。この取組みが、周辺の県にどのような影響を及ぼすかが注目されるところでしょう。

 ところで、府県合併に関して一際ユニークな議論をしているのが大阪府と大阪市です。大田知事は就任直後から大阪府と大阪市を合併して「大阪都」とする構想を打ち出しており、昨年9月に策定した行財政計画には「大阪都構想や府市連合など自治システムの研究」を盛り込んでいます。これに対して大阪市の磯村市長は、府市の合併は「無理がある。府県合併で近畿州をつくる方がいい」と批判(平成14年4月10日毎日新聞)しています。都道府県並みの権限を持つ政令指定都市を有する地域では、都道府県と市の合併も今後の一つの選択肢として議論されるようになってくるのかも知れません。

 現在の都道府県の境界は、明治期に現在の原形が形成されて以来、大きな変更は行われていません。市町村の適正規模が時代に応じて変わるのであれば、都道府県の規模もまた、同様に見直しの対象となるのは必然でしょう。第27次地方制度調査会がどのような方針を出すか。今後の動向に注目です。
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