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コラム「研究員のココロ」

CRM成功の条件

2002年07月08日 藤本政信


 顧客との関係を強化することによって利益を向上させるというCRM(Customer Relationship Management)への関心は相変わらず高い。数ある経営手法の中でも今最も注目を浴びている経営手法のひとつといっても過言ではない。様々な調査結果を見てもCRM市場は今後数年順調に伸びつづけるというのが大方の見方である。

 しかし、CRMの「失敗率」も期待同様に高いと言われる。一般にCRMプロジェクトのうち約6割は何の成果も上がっていないと言われ、ガートナー・ジャパンは、「CRM市場は、ベンダーが喧伝したアプリケーション導入のメリットをすべて享受できると期待して企業が殺到したにもかかわらず、その多くが結果に失望するという、典型的な経過をたどっている市場である。」(※)と分析している。

 つまり、CRMは世の経営者を虜にする十分な魅力を持つが、その成功は容易でないという点でリスクの高い経営手法となっている。実際、導入を検討している企業にとってもこのことは既に周知の事実であり、このリスクをヘッジして、CRMを失敗させない方法はあるのか、という相談をよく受ける。

 CRMという分野は成功率が低いだけに、失敗の研究も進んでいる。その証拠にインターネットで「CRM」「失敗」というキーワードで検索してみると、何千という情報がひっかかってくる。

 ここではこれら失敗の教訓の中から最も重要と思われる点を1点だけ述べたい。

 CRMに失敗した企業の多くは、初めからあまりに完璧なものを作り出そうとして挫折している。できる限り完成度を高めてスタートさせたいと思うことは当然といえるが、それゆえに大事なことを忘れがちだ。それはCRMへの取組みを1回限りと捉えるのではなく、2回目、3回目の継続的な取組みが有意義になるような体制(自己進化体制)を整えることである。最初の取組みが終わったときに、その取組みを評価し、更なる改良を加えていく活動、体制を構築することこそ、CRMを最終的な成功に導く道である。


 このことを主張する根拠として、以下「3つの事実」を挙げたい。

1.「CRM導入成功企業も最初から成功しているわけではない」
 雑誌などでCRMの成功事例として華々しく取り上げられる企業も、実際話を聞いてみると、そのほとんどは1回の導入で成功に到達しているわけではない。データの収集・登録が思うように進まない、顧客分類による差別化が難しい等の課題に直面しながらも、これを地道に克服し、成果をあげてきている。

2.「当初から2回目の取組みに向けた体制が整えられていることは少ない」
 上述のように多くの取組みは1回では完璧な結果はもたらさない。ここで「失敗」としてあきらめるか、「成功の1段階目」として次に備えるかで企業の判断は大きく分かれる。このことはCRMの成否にも大きく関わってくることであるが、残念なことに前者の結論を採択する企業が多いように思える。

3.「例え成功しても環境は常に変わる」
 顧客は常に変わる。テクノロジーも変わる。競合も変わる。市場で競争優位や顧客満足を得るための変数は常に変化している。この変化を常に捉えて、築き上げたCRMの仕組を修正していかねばやがては陳腐化していく。そのためにはチェックのための評価指標が必須である。

 これらの事実を踏まえ、取組みの計画段階から、その取組みに対する評価指標、その結果による次ステップのプランを検討し、それをモニタリングする体制を整えておく必要がある。評価指標には最近は経営の成熟度を数値化する考えも盛んで、これらの指標を上手く組み合わせていくことが重要である。

 実はこの考えは特別に目新しいものではない。CRM導入に際しては、まさに昔から言われているPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを、基本に忠実に展開していくことが極めて重要であることを示している。

 次に示す言葉は、様々なところで引用されているが、これをお題目に終わらせることなく、実践することこそが今必要とされているのではないだろうか。

「 夢 」がある人には、「希望」がある。
「希望」がある人には、「目標」がある。
「目標」がある人には、「計画」がある。
「計画」がある人には、「行動」がある。
「行動」がある人には、「結果」がある。
「結果」がある人には、「反省」がある。
「反省」がある人には、「進歩」がある。
「進歩」がある人には、「 夢 」がある。

(※)出典:ガートナーリサーチノート
『2002年の予測:ビジネスアプリケーションの行方』D.Miklovic(2002年3月25日)GJ02214
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