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ニュースリリース

新たな成長地域を求める、わが国の人口流動
-人口流動の「停滞」を超えて-

2009年11月10日

【レポートのねらい】

わが国では、2001年ごろから一部の高成長地域への人口集中傾向が高まってきた。これは、大都市が輸出関連産業をけん引役として経済成長する一方で、地方では公共事業費が削減されたことなどにより低成長が続き、人口吸引力に地域間格差が生じたためである。
しかし、世界的な経済の失速により、2008年秋以降、企業の雇用マインドの悪化や海外戦略の見直しが進み、東京圏や愛知県などに向けた人口流動にも変化が生じている。
本稿では、これまでの国内外の人口の動きを整理し、新たな人口流動が生じる方向性とそれに伴う問題点について明らかにする。

【要 約】

1.本稿の目的は、地域間及び国境をまたぐ人口の動き(人口流動)を整理し、今後の人口流動の方向性とそれに伴う問題点について明らかにすることにある。

2.わが国における2008年夏までの人口流動は、東京をはじめとする大都市への流入が顕著で、とくに直近3年間は、東京圏や愛知県への転入超過数が、過去20年間で最も高い水準にあった。

3.しかし、2008年秋以降、全国的な景気の悪化により、大都市への人口集中の動きにブレーキがかかり、東京圏や愛知県でも転入超過数が減少している。もっとも、他の特定の県や地域への流入が増えているわけではなく、わが国経済が萎縮するなか、人口流動は「停滞」している状況にある。

4.国境をまたぐ人口流動についてみると、日本人の海外への流出は、これまで長期的な増加基調にあった。2007年10月~2008年9月までの1年間は、企業関係者の帰国数よりも、永住者などの増加が上回り、過去20年間で最大の出国超過となった。出国者の年齢別データから、とくに近年、若い世代で「永住」、「留学」を理由とする出国が増えていることが推測できる。

5.一方、在留外国人の出入国の状況をみると、製造業を覆う不況の影響をまともにかぶった格好で、2008年秋以降、日系ブラジル人を中心に出国超過となっている。

6.しかしながら、このような人口流動の停滞が長期化するとは考えにくい。企業は新たなマーケットやより有利な経営環境を求め、人は雇用機会や高い所得を求めて、成長地域を目指し移動すると考えるのが一般的であろう。こうしたことを前提として、中長期的な人口流動の方向性を展望すれば、下記の通りとなる。

① 日本人、外国人を問わず、雇用機会を求めて海外に流出する若い世代が増加する。同時に、国内マーケットの縮小などにより、企業の海外流出は加速され、人口と企業の流出がスパイラル状に連鎖することも予想される。
② 日本人の国外流出状況を地域別にみると、とくに東京圏からが多くなっていることから、将来、東京が人口流動のダムとはなりえず、地方都市から人口を吸い上げ、その分海外へ流出させるポンプ役に陥ることが懸念される。
③ 東京以外の地域については、海外や他地域への人口流出を抑制する有効な手段に乏しく、人口減少と衰退に拍車がかかることは避けられない。

7.人口流出と経済規模の縮小という衰退のスパイラルに入り込まないためにも、海外からの投資や優秀な人材を呼び込む態勢を築くとともに、現在国内で活動する企業の存続や発展を促すべく、国レベル、地域レベルでそれぞれが成長戦略を描き、雇用を創出することが不可欠である。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社 日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター 藤波
TEL : 03-3288-5331