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平成22年度「今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査」結果 ~上水道編~
~水道施設の更新問題、財政不足に加えて人員不足の影響も深刻包括委託やコンセッション導入の機運が高まる~

2010年10月18日

各位

株式会社日本総合研究所

●今後の水道施設の更新に関して、多くの事業者が財政のみならず、人員も不足すると認識。
●水道事業者側では、包括委託、コンセッションの導入機運が高まる。コンセッション方式の導入により、今後10年で3~4,000億円程度の新たなPPP市場が創出される可能性がある。
●包括委託、コンセッション方式の導入に関しては、受託者の事業執行能力や危機管理・リスク分担に懸念。委託による職員スキルの低下も、水道事業者側の大きな不安要因に。

株式会社日本総合研究所(代表取締役社長:木本泰行 本社:東京都千代田区)は、今後の上水道事業の経営課題に関し、全国の都道府県および市によって経営がなされている水道事業者777団体(専用水道・簡易専用水道除く)を対象としたアンケート調査を、2010年7月~8月に実施しました。本調査は、10月7日に公表した「今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査~道路編~」の続編に当たります。

高度成長期に整備された水道施設(浄水施設、配水管路等)の多くは老朽化が進んでおり、大量更新時代が目前に迫っています。しかし、必ずしも全ての事業者が、今後の大量更新時代を乗り切るための準備を整えているわけではありません。例えば、施設の更新には相応の財政支出を伴いますが、経営主体である自治体の財政難の影響を受けて、水道事業の維持管理費が削減される例もあります。また、維持管理を行っていくためには技術系職員が必要ですが、人員体制の整備を行っている水道事業者は限られています。

6月に閣議決定された「新成長戦略~『元気な日本」復活のシナリオ~』でも、「国・地方の財政状況の逼迫等により、社会資本ストックが更新できなくなるおそれがある」という問題意識から、社会資本ストックの戦略的維持管理等の必要性を指摘しています。さらに、「厳しい財政事情の中で、維持管理のみならず新設も効果的・効率的に進めるため、PFI、PPP の積極的な活用を図る」と踏み込んだ見解も示しています。

弊社は、上記の課題認識に基づき、今後、資本的支出の増加が見込まれる水道事業に関して、PPPの活用(具体的には、性能発注思想に基づく包括委託の拡大と、コンセッション方式の導入)が有効であるとの仮説のもと、全国の水道事業者に対してアンケート調査を実施しました。調査項目は、水道事業の経営課題、業務委託の活用状況、包括委託の活用状況と想定課題、コンセッションの導入意向と想定課題、想定される委託先などです。

調査の結果、多くの事業者が財政面のみならず人員面でも課題を抱えていること、包括委託、コンセッションの導入検討意向が高まりつつあること、コンセッションの導入によって新たに3,000億円~4,000億円規模のPPP市場が生まれる可能性があること、包括委託やコンセッションの導入拡大に当たり、受託者の事業執行能力、危機管理・リスク分担、職員スキルの低下が水道事業者側の不安要因になっていることなどが明らかになりました。

アンケート概要

調査方法: 全国の都道府県および市によって経営がなされている水道事業者
(計777団体/専用水道・簡易専用水道除く)
調査期間: 2010年7月~8月
調査方法: 質問は郵送、回収はファクシミリもしくはE-mail
回収数: 253票(回収率32.5%)

アンケート結果

水道施設の更新に関しては、財政のみならず、人員も不足する見通し

  • 水道施設の更新に関して、既に財政不足、人員不足が顕在化している事業者は4割近くに及びます。
  • 今後10年間を対象にすると、実に9割以上の事業者で財政不足が問題になり、8割弱の事業者で人員不足が問題になる見通しです。大量更新に備えて万全の準備が出来ている事業者は限られています(図-1)。

図-1(1)水道施設更新:財政面の課題(N=242)

図-1(2)水道施設更新:体制面の課題(N=240)

水道事業者側では、包括委託、コンセッションの導入機運が高まる
コンセッション方式の導入により、今後10年で3~4,000億円程度の新たなPPP市場が創出される可能性も

  • 既に2割の事業者が、包括委託を導入しています。さらに、導入を検討中または検討予定の事業者も4割近く存在しております(図-2)。
  • 今後10年間でコンセッション方式の導入検討を行う意向を有する水道事業者は13.5%に上ります(図-3)。
  • 水道事業者の総営業収入は平成20年度で約3兆円 程度であり、今後10年以内に水道事業者の13.5%がコンセッション方式を導入した場合には、今後10年間で新たに3,000億円~4,000億円 程度のPPP市場が創出される可能性があります。

図-2 包括的な民間委託の導入(検討)状況(N=238)

図-3 コンセッション方式の導入(検討)意向(N=223)

※1 性能発注の考えに基づき、複数の業務を(基本的には)複数年度の契約で民間事業者に委託を行う方式
※2 水道資産を自治体が保有したまま、事業権を民間に付与することで、設備投資や事業運営において民間の創意工夫を活用する委託方式
※3 総務省「平成20年度地方公営企業年鑑」
※4 3兆円(営業収入)×13.5%(コンセッション検討意向比率)=約4,000億円

包括委託、コンセッションの導入に関しては、受託者の事業執行能力や危機管理・リスク分担に懸念
委託による職員スキルの低下も、水道事業者側の大きな不安要因に

  • 包括委託、コンセッションの導入に関しては、受託者の事業執行能力を不安視しています(適切な監視体制の構築、適当な委託先の確保)。また、危機管理体制の弱体化やリスク分担についても懸念が表れています。
  • 委託による職員スキルの低下も、水道事業者側の大きな不安要因になっています(図-4、図-5)。

図-4 包括委託導入時の想定課題(MA)(N=139)

図-5 コンセッション導入時の想定課題(MA)(N=253)

アンケート結果に対する弊社の考え

  • 水道施設の維持管理・更新に関して、水道事業者の多くが課題認識を有しておりますが、財政不足のみならず、人員不足の影響も深刻化しつつあります。
  • 包括委託やコンセッションについては、導入機運が高まる一方で、受託者の事業執行能力や危機管理・リスク分担については懸念も見られます。水道事業の運営は、これまで「官」が一手に引き受けてきたため、民間活力の導入拡大のためには、水道事業者の有する有形・無形のリソースを民間企業に継承していく必要があります。そのためには、委託後も官民が協働して事業運営を行うという発想への転換が必要になると考えます。
  • また、民間企業の参入を促す仕組みづくり(制度改革、税制改革)も、併せて検討することが望まれます。

ご案内

本調査結果等を踏まえて、以下のシンポジウムを開催します。

(東京地区)

2010年11月11日(木)
「社会基盤イノベーションシンポジウム 次世代の社会基盤の姿~成長戦略を超えて~」(日経カンファレンスルーム)

(大阪地区)

2010年11月17日(水)
「社会基盤イノベーションシンポジウム 次世代の社会基盤の姿~関西・大阪の成長戦略実現に向けて~」(ブリーゼプラザ・小ホール)

また、日本総合研究所では、水道事業者や民間事業者等と連携して、水道事業を対象とした具体的なPPPスキームのあり方(包括委託・コンセッションなど)、官民の役割分担などに関する研究を今秋から開始する予定です。

調査の概要につきましては、別添資料「平成22年度『今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査』~上水道編~」をご参照ください。

日本総合研究所について

株式会社日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループのグループIT企業であり、情報システム・コンサルティング・シンクタンクの3機能により顧客価値創造を目指す「知識エンジニアリング企業」です。システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供に加え、内外経済の調査分析・政策提言等の発信、経営戦略・行政改革等のコンサルティング活動、新たな事業の創出を行うインキュベーション活動など、多岐にわたる企業活動を展開しております。

本件に関するお問い合わせ先

総合研究部門 段野(だんの)
E-mail:200010-info@ml.jri.co.jp
TEL:03-3288-5229 FAX:03-3288-4691

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