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オピニオン

【シニア】
第6回 ギャップシニアへのアプローチ

2016年03月22日 沢村香苗


 第5回メールマガジンでは、総務省統計局の平成25年家計調査から、高齢世帯の消費動向を概観しました。今回のメールマガジンではマクロデータを離れ、個人としてのギャップシニアをどう捉えるかについて、実証事業から見えてきた内容を紹介します。

 高齢者の市場といえば、第2回「ギャップシニア市場を創造する」で要介護シニア市場と元気シニア市場に二分されていると表現したように、一般には身体機能に着目したセグメント化が主流です。商品を開発する上では身体機能の状態は重要な因子ですが、いざシニアのニーズを掘り起こし、諦めてしまっていたことを実現する方法を提案する段階ではあまり手がかりにならないというのが実感です。
 先に結論を述べてしまえば、ギャップシニア市場の創造とはシニアの「欲望」の再点火であり、その欲望の方向性や着火のポイントは「人によって」違います。若年者を相手にしたビジネスでは当たり前のこんなことが、シニアを相手にした瞬間に、これまで忘れられてきたのではないでしょうか。

 日本総研は、実証事業という形で実際にシニアと接点を持ち、ニーズの掘り起こしに挑んで来ました。ここでまずぶつかった大きな壁は、ニーズを掘り起こして実現手段の情報を提供しても、シニアから返ってくるのは微笑だけという現象でした。例えばどんな料理が好きかを詳細に尋ねて明らかにしたものの、肝心の食欲がなかった状態といえばお分かりいただけるでしょうか。一方で、陳列してあった便利グッズを「これは買えるの?」「これは?」と食いつくように見て、安くはないのにスパッと買う人にも少なからずめぐり合いました。前回のメールマガジンでも紹介したように、シニアの消費意欲は旺盛なのです。では私たちに何が足りないのか?と考えて、シニアの新たなセグメント化の必要性に思い至りました。
 ギャップシニア・コンソーシアムがやろうとしていることは、連載の第1回と第2回でも書いたとおり、加齢によって生じる「やりたいこと」と「できること」の隔たりを、諦めや我慢によってではなく、積極的な商品・サービスの利用によって解消する仕組みを作ることです。それを実現するためには、シニアの「諦めや我慢」についてもう少し細かい洞察が必要なのです。それを知らなければ、欲望の再点火を引き起こせません。

 私たちが提案するのは(1)外出頻度と(2)精神的充足度を軸としたシニアのセグメント化です。そこから、シニアの特徴と、アプローチ方法のヒントを導き出すことができます。今回は「欲望」あるいは「意欲」をたき火になぞらえて紹介します。
 分類(1)外出頻度が高く精神的充足度も高い: 加齢に比較的うまく適応している人です。積極的で、自分の欲しいものを探す気持ちがあります。常に勢いよく火が灯っているので、そこに燃料(つまり、情報や商品)を上手に継ぎ足してゆけば、火を絶やさずにいることができます。それほど燃料の種類は問いません。
 分類(2)外出頻度が低く精神的充足度が高い: 外部との交わりにはやや消極的であるけれど内面的に充実している人です。不活発にみえますが、家の中の活動で満足していて不安・不便がありません。例えば手芸、読書といった内的な活動を楽しんでいることが多いようです。静かに火はついているのですが、酸素が不足しないように、外部からの刺激が適度に必要な人です。そして、燃料は何でもよいわけではなく、厳選される必要があります。
 分類(3)外出頻度が高いが精神的充足度が低い: 一見活動的ですが、自分に合うものがない、減ってきたと不満を感じている人です。中年期の活動を維持してきたものの、環境や自分の変化に伴ってつまずきが生じていることが多いようです。やたらと動き回っても挫折してしまうし、かといって動きを止めれば不活発になってしまいます。どうすれば程よい火を燃やし続けられるか、程よい火がどのくらいなのかについて一緒に見極めていくことが重要です。現役のときと同様の役割を得て大きな火を燃やし続ける人、新たな趣味を見つけて小さめの火を燃やし続ける人、出口はそれぞれですが、一緒に迷って探す姿勢が大切です。
 分類(4)外出頻度も精神的充足度も低い: 諦めや我慢をしている人です。「困っていない、満足だといったらウソだけど、仕方ない」という状態で、火が消える寸前です。何がしたいか、何が好きなのか、自分でも分からなくなっていることが多いようです。その小さな心の火がどこで燃えているかを見つけて、燃料をペースにあわせて徐々に投入し、外部からの刺激という酸素を供給して、少しずつ火の勢いをつけてゆくという丁寧な後押しが重要です。

 このように、シニアが今どのくらいの「火」を持っているかを見極め、それぞれに合った方法でアプローチすれば、時間はかかっても必ずまたあかあかとした炎となる、と信じながら実証の現場に出ています。
 次回メールマガジンでは、シニアのニーズを起点とした商品開発の実際について紹介します。

<バックナンバー>

「第1回 ギャップシニアとはどんな人か」
「第2回 ギャップシニア市場を創造する」
「第3回 ギャップシニア市場は公民連携で拓ける」
「第4回 ギャップシニアの日常生活」
「第5回 ギャップシニアの消費行動」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。