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【シニア】
第4回 ギャップシニアの日常生活

2016年02月23日 岡元真希子


 ギャップシニアはどのような生活を送っているのだろうか。アクティブシニアと異なり、既存のネットアンケートやグループインタビューの調査モニターのなかにギャップシニアを見つけるのは難しい。また、要介護者であれば介護事業者などと連携して、施設入所者に話を聞いたり、在宅モニターを抽出することもできるが、ギャップシニアはそのようなアプローチルートもない。把握しづらいギャップシニアの日常生活は、これまで、あまり浮き彫りにされてこなかった。
 これを把握するために、日本総研では、全国19の自治体の協力を得て、約148万人の高齢者を代表する「全国パネルデータ」を構築した。これは、介護保険の保険者である自治体が、要介護になる手前の高齢者を見つけ出して、体操や認知症予防などのサービスを提供していることに着目したものである。自治体は、調査票を郵送したり、あるいは住民健診などの場で調査票への記入を依頼したりすることによって、高齢住民のなかから、ハイリスクのギャップシニアを見つけ出し、介護予防教室の案内をしている。

基本属性と暮らし
 全国パネルデータに基づき推計すると、ギャップシニアの平均年齢は75.8歳である。年齢階級別に見ると、79歳まではギャップシニアよりもアクティブシニアが多数を占め、要介護者は1割未満である。80~84歳になると、アクティブシニアとギャップシニアがほぼ均衡すると同時に、要介護者が約2割を占める。85歳以上の層では、要介護者の割合が約半数に上り、ギャップシニアが3割、アクティブシニアが2割という構成比になる。
 典型的なギャップシニアとして、75歳~84歳という年齢階層に注目すると、女性が59%、男性が41%である。世帯構成は、子などとの同居が69%、夫婦二人暮らしが34%、ひとり暮らしが26%という構成比になっている。

身体機能の低下
 在宅で、基本的に自立した生活を送っているはずのギャップシニアだが、身体機能は少しずつ低下している。75歳~84歳のギャップシニアのうち、椅子に座った状態から立ち上がるときに、何かにつかまって立ち上がる人が50%に上り、直近の1年間に転んだことがある人が43%、転倒に対する不安がある人が79%に上る。外出するときに杖を使う人が25%、歩く速度が遅くなってきたと感じている人が87%に上る。
 食事の介助などは必要ないものの、固いものが食べにくくなったと感じている人が60%、お茶や汁物などでむせることがあるという人が50%など、食事の面でも、少しずつ身体機能が低下してきている。

認知機能の低下
 認知機能の低下の兆候も少しずつ現れており、75歳~84歳のギャップシニアのうち、周りの人から「いつも同じことを聞く」などのもの忘れがあるという指摘を受けるという人は30%、5分前のことが思い出せないという人が13%に上る。認知機能の低下によって日常生活に支障が発生するレベルにあたる認知機能尺度(CPS)が2以上が15%に上る。ただし、アルツハイマー病として診断を受けている人は3%未満である。

健康
 75歳~84歳のギャップシニアの89%が日常的に通院しており、5種類以上の薬を処方されている人が42%に上るが、自分自身の健康について「とても健康」「まあまあ健康」であると感じている人が61%である。多い病気は、高血圧、関節症などの筋骨格の病気、白内障などの目の病気である。

 日常生活のデータから、ギャップシニア像が少しずつ見えてきただろうか。
 次回連載では、ギャップシニアの消費行動について引き続きデータを中心に分析していきたい。

<バックナンバー>

「第1回 ギャップシニアとはどんな人か」
「第2回 ギャップシニア市場を創造する」
「第3回 ギャップシニア市場は公民連携で拓ける」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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