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【シニア】
第2回 ギャップシニア市場を創造する

2016年01月26日 徳村光太


 シニア市場は、国内で数少ない、今後、成長が見込まれる消費市場であり、多くの企業が注目しています。日本総研は、現在のシニア市場は要介護シニア市場と元気シニア市場に二分されていると捉えています。
 まず要介護シニア市場は、介護保険制度で給付される介護サービスを含む市場です。要介護状態になる年齢には個人差がありますが、主に80歳代以上のシニアがターゲットです。介護保険制度で提供されるサービスには、老人ホーム等の入所サービス、訪問介護等の在宅介護サービスがあります。保険外で提供される商品やサービスとして、サービス付き高齢者住宅、福祉用具、おむつなどの日用品、介護食品、介護者付き旅行などが存在します。
 次に元気シニア市場は、50歳代後半から70歳代をターゲットとした市場です。代表的な商品やサービスとして、旅行、パソコンやタブレット教室、さまざまなカルチャースクールなどがあります。

 日本総研は、現在のシニア市場にギャップシニアをターゲットとした商品やサービスがほとんど存在しない点に注目しています。なぜギャップシニアをターゲットとした商品やサービスが存在しないのか、それは要介護シニアや元気シニアに比べて、ギャップシニアのニーズが捉えにくいこと、ギャップシニアへのアプローチが難しいことが理由だと考えられます。
 またギャップシニアは、要介護シニア市場と元気シニア市場のいずれにおいても消費者になっていないと考えられます。ギャップシニアの年齢は、70代後半から80代が多く、年齢階層としては要介護シニアや元気シニアと重なっています。しかしギャップシニアには要介護シニア向けの商品は、「私には関係ない」「もっとお年寄り(具合の悪い人)が使うもの」と捉えられてしまいますし、元気シニア向けの商品は「元気な人のもの」「若い人のもの」と捉えられて敬遠されてしまうからです。

 日本総研は、要介護シニア市場と元気シニア市場に二分されたシニア市場に、ギャップシニアの考え方を持ち込むことで、ギャップシニアを消費者に変え、さらにはシニア市場全体を活性化させていきたいと考えています。ギャップシニア市場に注目すべき理由は、2つあります。
 第1の理由は、ギャップシニア市場の大きさです。日本総研の推計では、ギャップシニアはおよそ1,200万人にも及びます。これはシニア市場3,800万人のおよそ3分の1にあたり、また要介護シニア市場400万人のおよそ3倍の規模に相当します。
 第2の理由は、ギャップシニア市場が、元気シニア市場と要介護シニア市場を連結する役割を果たし、シニア市場全体を活性化させることになるからです。シニアは年齢や疾患やライフイベント等によって、元気シニア・ギャップシニア・要介護高齢者の状態を行き来することに特徴があります。例えばある企業の現在の主要顧客が元気シニアであるとします。その企業が、ギャップシニア向けの商品やサービスを提供することによって、主要顧客がギャップシニアになった後もビジネスを継続することができます。また主要顧客が要介護シニアである企業であれば、ギャップシニア向けの商品やサービスを提供することは将来の主要顧客を囲い込む効果が期待できます。

 以上、消費者や市場の視点からギャップシニアについて述べてきました。一方でギャップシニアは、介護政策の視点からも注目すべき対象です。第3回メールマガジンでは、介護保険制度におけるギャップシニアの位置づけについて書いていきたいと思います。

前回の連載はこちらからご覧ください


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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