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2030年の環インド洋経済圏

2015年10月30日 田中靖記


増加する新興国同士での貿易
 2013年から2014年にかけて、世界経済成長の潮目が変化している。図1に示す通り、2010年程度までは、先進国(OECD加盟高所得国:図中黄線)と、新興国(その他の国:図中青線)の輸出入の動向はほぼ連動していた。「先進国が輸入をし、新興国が輸出をする」という貿易構造によって、世界経済の成長がもたらされてきた。例えば、中国沿岸部の工場地帯から米国・欧州・日本への輸出、バングラデシュ・インドの縫製工場からの先進国企業に向けた輸出など、先進国の輸入量と新興国の輸出量の増減が対比される形で貿易構造が成立してきた。
 一方で2011年以降、先進国の貿易量がほぼ横ばいで推移しているにもかかわらず、新興国の輸出入額は着実に増加している。これはつまり、新興国同士での取引が活発化してきたことを意味している。

図1:先進国と途上国の貿易量推移


出所:OECD Databaseより日本総研作成


人口増加が経済成長をもたらす
 今後2030年にかけて、最も人口が増加する地域の一つが「環インド洋地域」だ。インド洋がオーストラリアから東南アジア・インド・中東・東/南アフリカを結び付けるこの地域は、長期的に見ると、経済成長の中心となる可能性が高い。2010年現在、約22億5500万人である環インド洋諸国の人口は、2040年までに約8億人増加し、約30億人の人口を抱えるまでになる。世界の全人口に占める割合も増加し、2010年の33%から、2040年には35%を占めるまでに拡大する。この環インド洋諸国における大きな人口拡大は、「人口ボーナス」となって経済規模の拡大に対して正の効果を与えるものである。
 これらの事実をベースに考えると、2030年の環インド洋地域の発展は、現在、「新興国」とされている国同士での貿易取引によって発展していくだろう。既にその萌芽はみられる。2000年時点において、東南アジア―中東、あるいは南アジア―オセアニア間における取引が、他の地域間の取引を大きく上回っていた。一方で2012年になると、南アジア―中東間の貿易規模が対2000年比で15倍、南アジア―南アフリカ間の取引は、同8倍以上に拡大している。

問われる域外からの日本の関与
 2015年10月、環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP)が大筋合意された。また、日・中・韓・印・豪・NZ・ASEANが参加するFTA構想である東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も、2015年末の交渉妥結を目指して、2012年以降断続的に交渉が重ねられている。これらの地域的経済連携協定における貿易は、先進国同士、あるいは先進国と新興国間の取引が中心的な役割を果たしている。
 一方で、環インド洋地域は、インドやASEAN諸国、アフリカ諸国など、現在「新興国」と呼ばれる国々が中心となって構成されている。環インド洋地域の地域連合である環インド洋連合(IORA)でも、環太平洋地域、ASEAN地域と同様に、将来的には域内FTA構想が検討されるようになるだろう。実際、IORA域内の貿易額は、現段階でもRCEPあるいはTPP域内貿易額の3分の2程度にまで及んでいる(図2)。IORA加盟諸国の今後の成長により、経済圏としての規模はますます大きくなる。

図2:経済連携協定・地域連合域内貿易額


出所:Direction of Trade Statistics(IMF)より日本総研作成


 日本は、TPP・RCEPともに、地域連合域内のプレイヤーとして関与している。しかし、将来的な成長・経済規模拡大が予測されている環インド洋地域においては、域外から関係性を構築していく必要がある。わが国としてどのような方法で関わりを持っていくのか、その方向性がまさに今問われている。

以上


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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