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オピニオン

女性の活躍支援策に必要な視点

2015年05月28日 小島明子


 昨年度廃案となった「女性活躍推進法案」が、今年の2月、改めて政府から再び国会に提出された。この法案では、従業員数300人を超える事業所に対して、女性活躍推進の行動計画の策定を行うことを求めており、行動計画のなかには、管理的地位に占める女性の割合に関する目標を設定することが含まれている。政府は、2020年までに指導的地位を占める女性の割合を30%にする目標を掲げており、法案の成立を通じて、企業などの組織における女性活躍支援の取り組みをさらに進めることを狙いとしている。

 「平成26年度 なでしこ銘柄」(経済産業省・東京証券取引所)の報告書では、女性活躍推進に向けた企業側の足元の課題として、「女性の管理職候補者の不足」(32.9%)と回答した企業の割合が最も高く、続いて「女性のキャリア意識不足」という回答(21.7%)という回答が多い。また、「トップによる理解不足」という回答はわずか1.2%であった。経営層による理解が不足しているのではなく、管理職候補となる女性人材が不足していること、女性自身のキャリア意識が不足していることが女性活躍支援を進める上での大きな課題であると考える企業が多い状況がうかがえる。

 では、女性人材の不足、キャリア意識の不足といった状況に対して、企業はどのような視点で取り組むべきなのか。ここで二つのことを提案したい。
 一つ目は、既存の価値観にとらわれず、女性の活躍の場を社内で広げていくことである。B to Bの製造業など、一部では、女性の活躍を通じた経営効果を描きづらく、取り組みの意義を見いだしづらい企業も存在しているのが現実である。そのような企業においても、まずは女性の活躍の場を広げ、得られた優良事例を積み上げていくことに意義がある。例えば、総合化学メーカーの宇部興産では、2007年に工場の技術スタッフとして初めて女性従業員を受け入れたことで、優秀な女性人材が多いことが認識され、女性従業員の職域の拡大につながるきっかけとなったという。女性の活躍の場が広がれば、女性管理職候補の裾野も将来広がることが期待できる。経営へどのようなメリットがあるのかという説得力は後から追いついてくるという面もある。企業のなかで得られた優良事例を積み上げていくことで、経営効果に寄与する女性活躍支援策が浮かび上がってくるようになる。
 二つ目は、長時間労働を削減し、働きやすい職場環境を提供することである。労働政策研究・研修機構(JILPT)「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査結果」(2014)では、従業員300名以上の企業における役職のない男女一般社員と係長・主任クラスの社員を対象に、課長以上への昇進を望まない割合と、昇進を望まない理由について調査している。そのなかで、昇進を望まない社員に理由を尋ねると、女性では「仕事と家庭の両立が困難になる」がもっとも多く、約4割にのぼる。女性のキャリア意識を向上させるためには、時間や場所に柔軟性を持たせた働きやすい環境の整備や、働いた時間よりも成果で評価をする人事制度を構築することで、管理職になっても仕事と家庭の両立を可能とする職場環境の整備が必須である。加えて、長時間労働が問題とされる日本企業では、男性を含めて働き方の変革を展開することにも意義がある。女性の活躍支援策をきっかけとして、男女問わず従業員の働きやすさと生産性の向上が実現していくことが望ましい。

 女性の活躍支援策を通じて、活躍する女性が増え、最終的には、企業価値を高められる企業が出現してくるか否か、政策目標はそこに置かれるべきであろう。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。