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オピニオン

地域デビューをためらう様子見シニアを後押しするには

2015年05月12日 山崎香織


 要介護状態となっても畑仕事やボランティア活動は現役。このように「いつまでも働きたい」、「社会貢献活動に取り組みたい」という思いを抱いている高齢者は多いものの、現実には仕事や活動に参加している高齢者の割合は低水準に留まっています。
 地域の仕事や活動への参加意欲を持ちながらも実際には参加をためらってしまう、「様子見シニア」とも呼ぶべき人々は、高齢者の約3割を占めています。筆者は、この様子見シニアの地域デビューを積極的に支援することが、高齢者が活躍する地域を作る起爆剤になると考えています。

 なぜ彼らは様子見をしているのでしょうか。主な理由として、地域での仲間が少なく、具体的な勧誘や口コミを得にくいことが挙げられます。「いつか誘われたら参加しよう」と思っているうちに地域とのつながりの少ない日常生活が固定化すると、徐々に意欲が失われてしまいます。
 また様子見シニアの健康状態、興味、経験は多様であり、仕事や活動をしたいと思う分野や参加形態、報酬の程度も様々です。こうした人々にとって仕事や活動の選択肢は現状では限られ、「ぜひやりたい」「自分にも出来る」と感じにくいのです。

 様子見シニアが様子見の状態から一歩踏み出す上で、筆者は2つの仕掛けが必要と考えています。
 1つめは、興味や経験の効率的な棚卸しです。高齢者にとって、自分の興味・経験と地域課題の接点が見えることは、地域のことを自分ごととして捉え、参加意欲を高めることにつながります。より多くの高齢者の棚卸しを支援するには、一対一の面談に加えて、自己評価や相互評価を支援するITツールの整備、そして高齢者の対話の場づくりが有効です。
 2つめは、チームでの参加促進です。様子見シニアが共に地域を学ぶ場においてチーム化を図り、チーム単位で仕事や活動とのマッチングや参加を促すことで、一人での参加に比べて仕事や活動を多角的に理解し、かつ定着までの悩みを共有しやすくなることが期待できます。チーム化を円滑に進めるには、場の運営を支援するコーディネーターの配置とその支援体制の整備が特に有効です。

 今後、高齢化と人口減少がさらに進む中で、様子見シニアの潜在力を掘り起こすことは、地域の生産力・内需の拡大や社会保障負担の軽減に向けた重要な一歩と言えます。これらの仕掛けを実装する方法を、様々な地域とともに編み出していきたいと思います。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。