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ギャップシニアの潜在ニーズを掘り起こせ!

2015年03月24日 齊木大


ギャップシニア向け相談サービスの実証
 ギャップシニア・コンソーシアムでは、ギャップシニア向けサービスの可能性を検証するため、去る3月3日~6日の4日間、浜松市にある社会福祉法人天竜厚生会のケアハウスで実証を行った。
 ギャップシニアとは、元気高齢者と要介護高齢者の間の状態の高齢者であって、「やりたい」ことと「できる」ことの間にギャップが生じていながら、その「ギャップ」に気づいていない。つまり、「日常生活の中で何となく今までのようにはうまくいかない」と漠然と思っていても、年齢や病気が原因と思ってあきらめたり我慢したりして、自分の困りごとやその解決のために利用できる商品・サービスにたどりついていないのだ。
 そこで実証したのが、ギャップシニアに対し、一人ひとりが持つ普段の生活の中で「やりたい」とか「やり続けたい」と思っていることに応じた商品・サービスの情報を探して提供する、いわば相談サービスの可能性である。
 ただし、自分自身のギャップに気づいていない場合が多いので、単に窓口を置くだけでは誰も相談に訪れない。そこで相談に至る前に、まずは立ち寄ってみようと思ってもらえるよう、コンソーシアムの参加メンバー企業のさまざまな商品・サービスの展示や体験会に、お茶や雑誌等をおいたサロンスペースを併設した。まだ肌寒い季節でもあり、足湯を置いたのも一工夫である。

「やりたい」ことから始まる相談プロセスが有効
 その結果、小規模な実証だったものの連日多数の来場者があり、最初は興味本位で来店した方が相談プロセスに入るなど、ギャップシニア向けの新たなチャネルの可能性が感じられた。
 相談サービスは、相談に応じるスタッフの応対スキル、商品・サービスに関する知識等が要求されるために属人的になりがちだが、今回の実証では相談プロセスをシステム化し、タブレット上で、「やりたいこと」と思っていること、その「やりたいこと」の実現に向けた「願い・悩み」(思い)、「困りごと」を、順を追って高齢者とともにたどっていくことで、その方に合った商品・サービス情報が表示されるようなアプリを利用した。その結果、多くの高齢者にとって関心のある情報が見つかった。
 高齢者向けに商品・サービス情報を探索・提案するシステムをつくる場合、ともすると現在の健康状態や困りごとを聞く、あたかも問診のような形から入るものが多い。しかし、このような流れでは気持ちも後ろ向きになりがちであり、当初は積極的に相談する気持ちがない高齢者にとっては、面談を続けられなくなってしまう。その点、「やりたい」ことから始まる相談プロセスは、良い意味で雑談の延長から相談を進めることができ、自然な流れでその人にあった諸品・サービスの情報を提供でき、結果としてお試しができる現物も比較検討しながら、納得して購買に至った事例も見られた。
 あきらめたり我慢したりしているためにニーズが潜在化しているギャップシニアに対して、「やりたい」ことから始まる相談プロセスは、関心や意欲を引き出し、生活を前向きに捉えていくための情報提供につながる手応えを得られた。今後は、今回実証した場(店舗)が、ギャップシニアとの接点を持つ地域包括支援センター、サロン、ドラッグストア、スーパー等に隣接するような形で展開していくことで、ギャップシニアの潜在ニーズがさらに幅広く掘り起こされることが期待される。

ギャップシニア側に立ち、適正な商品・サービスを提供する組織構成が課題
 実証を通じていくつかの課題も明らかになった。最たるものは「購買につながり過ぎてしまう懸念」への対応である。前述の通り、「やりたい」ことから始まる相談プロセスは、ギャップシニア自身にとって面談に入りやすくかつ納得感が大きいことが明らかになった。一方で、シニアから見ると納得感と信頼感から、つい「それ良いね、買う」と判断し、ともすると買い過ぎてしまう懸念も指摘された。
 ギャップシニア・コンソーシアムは、ギャップシニア(利用者)側に立ち、必要な商品・サービスの情報を探して分かりやすく提供し、購入機会を提案することを目的としている。したがって、仮に過剰な購入が懸念される(例えば、同じ商品を大量に購入している、購入総額が一時に多額になっている等)場合に、システム上でそのデータを検知し、「本当に必要か」を確認するプロセスを盛り込むことも必要と考えている。
 いわゆる販売のチャネルではなく、あくまでも利用者の視点に立って適切な情報を提供し、商品・サービスを提案するという理念を踏み外さない仕組みとすることで、民間企業セクターだけでなく、自治体(行政)や福祉・介護セクターが連携・協働できる新たな仕組みとしていきたい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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