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居宅サービス等における適正化とサービスの質の向上および 保険者機能強化のための調査研究事業

2014年05月28日 齊木大


*本事業は、平成25年度老人健康保健増進等事業として実施したものです。

事業目的
 本事業では以下の2点を事業目的として設定し、埼玉県和光市をフィールドにして実証的な調査研究を実施した。
  ・介護保険事業のアウトカム指標である要介護認定率等の変化を分析するとともに、介護予防事業に着目して、その実施による効果検証と保険者における具体的なデータ活用の方法を検討する
  ・介護保険事業の評価に向けた、居宅系サービスの提供実態に関するデータ蓄積の仕組みを検討・検証するとともに、その課題と解決方法を検討する
 なお、和光市を調査研究フィールドに設定した理由は、同市が事業開始当初から、介護保険事業のデータ蓄積に基づく政策評価の実施という方向性を明示しており、上記目的のための検討・検証が行いやすい環境が整っていると考えられたためである。

事業内容

(1)介護保険事業の効果検証と保険者におけるデータ活用方法の検討
 埼玉県和光市が蓄積している要介護認定や二次予防等の状態像データや、地域支援事業のサービス実績を組み合わせて分析を行うことで、介護保険事業の効果検証のトライアルを行った。効果検証においては、時系列での年齢別要介護認定率の改善や、地域支援事業による二次予防対象者等の悪化率改善を主な視点とした。
  ・分析対象のデータ:全高齢者(※)の状態像区分(要介護、要支援、二次予防、自立、等)、年齢、地域支援事業への参加状況、基本チェックリスト回答結果、等
※2006年4月~2013年10月までに和光市の被保険者となったことがある者のうち、2006年4月~2013年10月に第1号被保険者となった者、または、第2号被保険者として要介護認定を受けた者16,237名分
  ・分析対象の事業期間: 2008年4月~2013年4月

(2)居宅サービス等の提供の適正化と保険者機能に関する検討
和光市内で訪問介護事業、介護予防事業、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業を実施している事業者において、サービス提供の担当者が訪問ごとに電子的に作成・伝送する利用者の状態像記録を活用すること等により、保険者がサービス提供状況をより客観的に、かつ正確に、効率的に把握する仕組み(以下、本仕組みとする)について検討を行った。
  ・参加事業者: 3事業者
   (訪問介護、介護予防、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、各1事業者)
  ・参加介護職員: 26名
   (訪問介護6名、介護予防1名、定期巡回・随時対応型訪問介護看護19名)
  ・参加利用者: 7名
   (訪問介護2名、介護予防1名、定期巡回・随時対応型訪問介護看護4名)
  ・実施期間: 2013年10月~12月 
 なお、上記のデータを把握する本仕組みの構築ならびにデータ取得は、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)に委託して実施した。

(3)検討委員会の設置、検討
 (1)と(2)の調査の進め方、調査結果の解釈、報告書のとりまとめ等に関して検討を行う目的で、有識者から構成される検討委員会を設置し、年度内に3回開催した。


事業結果
1.調査結果の総括
 今回実施した(1)(2)それぞれの検討結果の総括について記載する。

(1)介護保険事業の効果検証と保険者におけるデータ活用方法の検討
 和光市の介護保険事業について、定量的な分析を行い、以下の点を明らかにした。
  ・和光市では80代を中心に要介護認定率が低下し、二次予防対象率が増加していた。
  ・二次予防対象者の状態像の平均値は低下しているが、悪化率(二次予防対象者から要支援や要介護へ移行する割合)の水準は維持されていることから、介護保険サービスが適正化され、地域支援事業がその受け皿として機能していると考察できる。
  ・和光市においては、介護保険サービス適正化は既に十分な効果を発揮しており、今後は現在の取り組みを維持しつつも、二次予防対象者の出現率低下や悪化率を低下させることが新たな政策の方向性となり得る。

(2)居宅サービス等の提供の適正化と保険者機能に関する検討
 和光市内で訪問介護事業、介護予防事業、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業を実施している事業者において、本仕組みを試行したことで以下のような結果が得られた。
  ・操作忘れ等を除く、約6割のデータを正常に記録することができた。入退室時刻および滞在時間について計画と実施に乖離のあるケースを抽出することができた。
  ・記録操作を行う介護職員等にとっても、データを閲覧する保険者にとっても、過度な負担感は確認されなかった。

2.保険者機能強化に向けた示唆と課題
 保険者機能強化に向けて得られた示唆は以下の通りである。

(1)介護保険事業の効果検証と保険者におけるデータ活用方法の検討
 今回分析を行った各状態像の年齢別出現率の経年変化は、介護保険事業の政策評価の評価項目として有効である。また今後、全高齢者の状態像とサービス履歴の時系列データベースは、「新しい総合事業」の計画立案や効果検証等のPDCAサイクルを回していく際の有用なツールとなり得る。
 実現に向けた課題としては、保険者が保有する複数の業務システムからのデータ抽出・突合作業の標準化、分析可能な指標の作成ルールや作成の支援のあり方、システム化されていないデータを簡易に電子化する仕組みのあり方等が挙げられる。

(2)居宅サービス等の提供の適正化と保険者機能に関する検討
 本仕組みは、サービス提供の実態を保険者が把握する手法として有効である。本仕組みによって実際の入退室時刻や滞在時間が計画と乖離しているケースを抽出し、別途ヒアリング等によりその要因を把握することで、保険者による丁寧な指導を行うことができる。また、本仕組みが機能することで、将来的には事業者の適正なサービス提供への動機づけとなることが期待され、取得したデータはサービスの質の評価にも活用できる可能性がある。
 本仕組みの普及に向けた課題として、仕組みの意義等に関する事業者や利用者への啓発を進めること、仕組みの導入および継続的運用に係る費用負担のあり方に関する検討を行うことなどが挙げられる。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
 報告書:居宅サービス等における適正化とサービスの質の向上および保険者機能強化のための調査研究事業.pdf

本件に関するお問い合わせ

創発戦略センター マネジャー 齊木 大
TEL: 03-6833-5204   E-mail: saiki.dai@jri.co.jp
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