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CSRを巡る動き:女性の活躍支援と能力の活用

2013年12月02日 ESGリサーチセンター


 2013年10月、世界経済フォーラム(World Economic Forum)は、「The Global Gender Gap Report 2013」のなかで、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を公表した。日本の順位は調査対象136カ国のうち105位であり、前年の101位に比べて、4位も下がる結果となった。世界経済フォーラムでは女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析している。教育水準は高いものの、女性の経済活動や政治への関与が低いことが順位を下げた原因である。このことからは、国内では未だに女性の活躍できる機会が少ないことや、能力が十分に生かされていない状況が窺える。

 安倍政権では女性の活躍支援を掲げ、6月に公表をした日本再興戦略のなかでも、出産・子育て等による離職を減少させること、指導的地位に占める女性の割合の増加を図ることを目的とした施策が含まれている。女性の活躍支援は、企業にとっては、(1)生産年齢人口の減少に備えた働き手の確保、(2)女性の所得が増加することによる消費の効果、(3)女性従業員が増えることによって新たに創出される製品・サービス、という3つのメリットがあると考えられる。特に、企業の競争優位性につなげていくためには(3)をいかに実現させるかが難しい課題であると同時に、成功すれば業績への貢献が期待できる。

 新しい製品・サービスの提供においては、研究開発部門における研究者の存在が欠かせない。しかし、OECDによれば、日本では、企業で働く女性研究者の割合(2011年)が、7.6%であり、2004年(6.4%)と比べて、微増ではあるものの大きく増えてはいない。ジェンダー・ギャップ指数の上位であるノルウェー(22.7%)やフィンランド(16.8%)と比べると圧倒的に少ない数値であると言える。男女共同参画白書(平成24年版)のなかでは、国内で、女性研究者が少ない理由として、家庭仕事の両立が困難であるという理由が最も多く、その次に育児期間後の復帰が困難であることがあげられている。企業で働く女性研究者の数が海外に比べて少なく、さらには他の職種に比べて、ワークライフバランスや復帰の困難さが大きな原因であると考えられる。

 欧州では、2000年代前半から企業で働く女性研究者支援政策を打ち出し、企業で活躍する女性研究者の数を増やす取り組みを始めている。2003年には、企業における女性研究者の活躍支援策に関する欧州内外の企業含め、20社の企業の取り組み優良事例の紹介レポート「Women industrial research; Good practices in companies across Europe」を公開し、企業ができることのチェックリストを示している。チェックリストの項目としては、男女均等に向けたトップのコミットメント、ワークライフバランス、キャリア開発機会の提供、インターンシップなどを含めた教育機関との提携などが挙げられている。

 日本においても、一部の企業では、将来の女性研究者の母集団を増やすことを目的とした社会貢献プログラムを実施しているところも出てきている。しかし、直近の活躍支援という点では、自社の研究開発部門で働く女性従業員がキャリアを継続できるよう配慮する取組みがより重要だと考えられる。研究開発部門で働く女性向けには、業務の特殊性に配慮したより時間や勤務場所における多様な働き方を可能とする勤務制度や人事評価制度などの工夫を行うことも必要だろう。研究開発は企業にとっては競争優位の源泉である。女性の活躍支援を実現し、優秀な人材を多く維持し、研究開発力につなげていける企業が、競争優位性を築くという欧州の仮説に注目したい。
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