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【「CSV」で企業を視る】(12) バリューチェーンにおける共有価値創造―女性の活躍支援とプロセスイノベーション

2013年10月01日 ESGリサーチセンター、小島明子


 本シリーズの第1回目では、ポーターの「『共有価値』の創造:Creating Shared Value(CSV)」(※1)の現状と企業価値への関連の可能性について解説をし、その後、10回にわたり具体的な企業の事例を交えて解説している。第5回目では、共有価値創造の手法の1つである、バリューチェーンにおける共有価値創造の事例として、ユニ・チャームが行っているサウジアラビアでの女性の社会進出支援の取組み、第7回目では、国内において、女性従業員のみで設置されたプロジェクトチームが、実際に新しい商品開発に成功しているエス・バイ・エルと大垣共立銀行のプロダクトイノベーションの事例を取り上げた。第11回目では、女性従業員の活躍支援をプロセスイノベーションに役立てている事例を紹介する。

(1)業務内容の工夫と生産性向上
 カルビーでは、アニュアルレポートのCEOのメッセージのなかで、ダイバーシティの推進が成長のためには欠かせないものであると謳っている。同社では、従業員の約半数を女性が占めていることから、女性の活躍推進に着目をし、2010年度に「ダイバーシティ委員会」を設置。2012年度には、女性のキャリア支援を目的とした「キャリア支援部会」、工場での普及活動を中心に行う「工場部会」などの活動も開始した。仕事と家庭の両立支援に配慮した制度の拡充にも努めており、育児休業制度や育児短時間勤務制度などを整備し、育児・介護休業取得者も増加している。
 ただ、同社では、結婚・出産後の定着率が向上し、時短勤務者が増加していた一方で、時間内に終わる仕事がないということが問題となっていたという。そこで、新宇都宮工場では、この対策として、ライン製造できない詰め合せ商品をつくることを時短勤務者が経営委員会に提案して実現し、時短勤務の女性従業員の生産性を上げている。この詰め合せ製品は、売上げも良いことから全国展開に向けて準備を行っているということだ。
 家庭と仕事の両立支援の制度を整備しつつ、職場の生産性の低下を防ぐことは難しい。それに対して、カルビーの事例のように、時短勤務者の生産性を向上させることを目的とし、担当する業務内容の工夫を行うことも解決策の1つとなるのではないか。

(2)業務効率化の促進
 資生堂では、2010~2012年度の第3次「男女共同参画行動計画」のなかで、活動テーマを「女性リーダーが恒常的に生まれる社内風土の完成」とし、「女性のリーダー任用と人材育成強化」「生産性向上に向けた働き方の見直し」の2つを重点課題とした具体的なアクションプランを策定し推進している。
 「生産性向上に向けた働き方の見直し」としては、1.「働き方見直し」の継続・充実による業務改革の確立として、残業時間短縮、定時退社、業務内容の再定義、管理・報告業務の基準づくり等、2.職場における業務生産性の向上の尺度づくりと業績評価・人事評価への反映、3.育児・介護との両立社員を対象とした在宅勤務制度の導入、の3つの項目を掲げている。(株)資生堂では、残業時間が30%削減されるという成果が出ており、2013年度以降は、生産性向上に向けたアクションの強化、人事KPI管理を徹底することなどを目指している。
 女性従業員に対して働きやすい環境を提供することは、職場全体での業務の効率化を推進する契機ともなる。ノー残業デーや休暇取得の促進も必要な取組みだが、長時間労働が常態化している日本企業においては、業務効率化を全従業員に徹底させるために給与評価への反映も有効な取組みであろう。資生堂のような取組みは、女性の活躍支援への貢献とともに、職場全体の業務効率化を促すことによる残業代といったコスト削減、従業員の健康維持、仕事以外の経験を得られることによる仕事への相乗効果等、長期的な価値向上に寄与するのではないだろうか。

 生産労働人口の減少が見込まれる国内においては、女性の活躍を支援していくことが社会的課題の1つでもある。企業にとっては、女性が活躍できる職場環境を提供しながら、生産性の低下を防ぐことが課題とされている。しかし、上記2社の事例に倣えば、それも実現不可能なことではないのではないか。

※1 Michael E. Porter, Mark R. Kramer, “Creating Shared Value:経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略,” DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー, June 2011.
参考資料:各社ホームページ、CSRレポート、有価証券報告書、アニュアルレポート

*この原稿は2013年9月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。

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